誰も福島の原発事故を忘れていない
一方、電力需要の増分を安定した原発で賄うことになれば、不安定なレベルの調整がまったく必要なくなるため、火力発電を減らすことが可能となります。二酸化炭素排出量も再エネ拡大の場合よりも遥かに少なくなります。さらに広大な敷地を確保する必要もありません。
ただ、『サンデーモーニング』では、以上のような常識がまったく通じないのです。
畠山澄子氏:やっぱり福島の原発事故を私たちは忘れるのかということかなと思う。13年経ったが、やっぱり私は解決していないと思う。事故の処理もそうだし、今も帰還できていない人がいるという事実がある。
そのようななかでエネルギー価格の話とか、電気代の話とごちゃ混ぜに議論しながら、事故後一環として盛り込まれてきた原発への依存度は可能な限り低減するという文言を取るのはあってはならない。
畠山氏は勘違いされていると思いますが、そもそも誰も福島の原発事故を忘れていません。原発事故の教訓は現在の安全対策に活かされています。
一般的に、ある人工物に事故が発生した場合に、その原因を解明し、事故発生の防止策を施せば、再び同種の人工物を利用することに問題はありません。福島第一原発の場合には、事故調査委員会が事故の原因を解明し、新規制基準で事故発生の防止を徹底しています。エネルギー価格や電気代とは無関係に再稼働の要件はクリアしています。
もし、このプロセスが「あってはならない」のであれば、死亡事故がしばしば起こる自動車や飛行機を利用するのも「あってはならない」ことになります。極めて残念ながら、事故で亡くなった犠牲者は再び帰ってくることはありません。
工学の歴史は事故の歴史であり、常に事故から学び、状況を克服して進歩しているのです。
畠山澄子氏:この話になると「事故後に新規制基準ができているから、それをクリアしていれば今後の原発は安全なんだ」という話が必ず出てくるが、その適合の審査というのは、基準への適合性を審査しているだけであって、原発そのものが絶対に安全とかゼロリスクであることとは同義ではないというのは何度も強調されている。