安倍元総理の命日にあたり、その功績を改めて記す|和田政宗

安倍元総理の命日にあたり、その功績を改めて記す|和田政宗

本日は安倍晋三元総理の命日。安倍元総理が凶弾に倒れてから2年を迎えた。改めてご冥福をお祈りするとともに、非道な暗殺を満身の怒りをもって非難する。


幾多の功績を上げた安倍総理

本日、共同通信は『安倍氏銃撃2年、凶弾余波いまも 高額献金、被害救済道半ば』との記事を配信しているが、暗殺犯はどんな境遇であっても人の命を奪った凶悪犯であり、暗殺犯側に立つかのような記事は極めておかしい。

安倍総理の功績は、我が国の歴史上の偉大な指導者として後世に語り継がれるべきものであり、その存在を暗殺によって失ったダメージは計り知れず、その観点での記事の発信がなぜできないのか。私は、安倍元総理の命日にあたり、その功績を改めて記したい。

幾多の功績を上げた安倍総理。最大の功績として挙げられるものは、次の2つであろう。それは、アベノミクスによる経済再生と、外交・安全保障の強化である。

アベノミクスが始まる前は、民主党政権下において、日本経済は将来沈没してしまうのではないか、手の打ちようがないのではないか、という悲観的な空気が広がっていた。私も「このままでは日本は終わる」と思い、参院選への立候補を決意した。

これらは数字上も明らかであり、民主党政権下では株価は9千円台、円相場は1ドル80円台前半(いずれも2012年11月末)であった。それがアベノミクスにより株価は2万4千円台へ回復し、円高も是正された。企業の活動が活発となり、サラリーマンの平均給与は、平成9(1997)年をピークに下落し民主党政権下ではどん底となっていたが、アベノミクスにより回復を続け、昨年は過去最高となったとみられる。株価は現在4万円を超えている。

また、円相場は民主党政権下で史上最高値の75円台を付け、輸出企業は日本国内で生産しても利益が出るような状況ではなくなった。そのため、海外へ生産をシフトする企業が増え産業の空洞化を招いたが、アベノミクスにより円相場は適度な円安傾向となるとともに、工場の国内回帰政策が取られ、産業基盤の再強化が図られた。

さらに、アベノミクスの肝は雇用であった。働きたいという意志のある方が必ず職を得て働ける状況を作ることを安倍総理は目指し、見事に実現した。失業率は民主党政権時代の4.3%から2.4%に低下、有効求人倍率は0.8倍から1.6倍へと倍増した。全都道府県全てで史上初めて有効求人倍率が1倍を超えた。これだけの経済や雇用の回復に手を打った宰相は過去にはいない。

安倍総理は外交リーダーとして頼られた

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そして、もう一つの大きな功績が、外交・安全保障の強化である。外交においては、「地球儀を俯瞰する外交」を展開し、歴代最多の80カ国を訪問、米国のオバマ大統領とトランプ大統領、ロシアのプーチン大統領とも対等に渡り合い、G7各国から安倍総理は外交リーダーとして頼られた。

安倍外交において、日本は世界の外交リーダー国として認識され、世界の平和と安定のために大きな役割を果たした。「自由で開かれたインド太平洋戦略(FOIP)」は、戦後の総理大臣が提唱した世界戦略で初めて世界のスタンダードとなったものであり、世界各国の首脳がインド太平洋地域に言及する時に必ず触れる用語となっている。

また、安全保障でも大転換を行った。特定秘密保護法制定により、防衛情報の日米間の共有を促進、平和安全法制の整備により有事への対応力強化と日米間の連携をさらに強め、抑止力の向上を果たした。抑止力については、岸田政権での決定となったが、安保三文書改訂の道筋を付け、敵地攻撃能力を持つことにより抑止力をさらに向上させることができた。

しかし現在、安倍総理のこうした功績を、我が国は十分に活かせているだろうか。ロシアによるウクライナ侵略、ハマスによるテロ攻撃に端を発したイスラエルとハマスの戦闘、日本はこれらを収めるためにリーダーシップを発揮しているのか。ロシアへの制裁やウクライナ支援は全くの受け身であり、ハマスへの支援を続けるイランやトルコ、カタールへの対応はほとんどない。安倍総理が世界のトップに高めた外交リーダーシップを発揮し、積極的に平和構築に関与すべきだ。

ここでリーダーシップと覚悟という観点からひとつのエピソードを記す。それは平成29(2017)年の衆院選についてである。この衆院選は、安倍総理が「国難突破解散」と名付け、消費税の引き上げ増収分を子育て支援に回すことや、北朝鮮の危機対応を重点政策として掲げた。

しかし、メディアや野党からは「モリカケ隠し」との謂われなき声が上がり、小池百合子氏が新党結党の動きを見せるなど、解散に適した時期であったかと言えば決してそうではなかった。だが、この選挙は北朝鮮への危機対応でやらねばならない選挙だったのである。ここで北朝鮮対応への信任を得て、来るかもしれない北朝鮮有事に対応するためであった。

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