海洋放出はあらゆる点で合理的なのに……
田中優子氏:海洋放出になった背景はよくわからないが、その前から専門家を入れた組織である原子力市民委員会などがモルタル固化案だとか、大型タンク案とか出している。なぜかというと2011年に約50年分のトリチウム水がもう海洋に流れてしまっている。これ以上は流すべきではないという判断から固定化してしまう案の方がよいと言っている。それが真剣には検討されなかった。結局コストの問題だ。人間ではなく数字だけ見て海洋放出を判断してしまった。IAEAに他の案を示していない。
海洋放出が選択された根拠は、以前より政府によって公開されています。
この資料には、コンクリート固化案として地下埋設も精緻に検討されています。
ちなみに、コンクリートはセメントと骨材で構成され(高強度)、モルタルはセメントと砂で構成(低強度)されます。いずれも地下埋設の処分方法であり、大きな差はありません。田中氏が「真剣には検討されなかった」というのはデマです。
説明は割愛しますが、資料から総合判断すれば、海洋放出が、コストだけでなく、工期・安全性・環境性(規模・廃棄物)等の観点から合理的であることがわかります。そもそも全量を1年で放出しても日本人の年間被曝量の千分の一にも満たない処理水の処理に対して、莫大な敷地とコストを要し、作業員の安全性確保に問題があり、福島の復興を阻害するモルタル固化案は合理的ではありません。
また、力学的に不安定な大型タンク案こそ何よりもリスクが高いと言えます。分野の専門家が長い期間をかけて科学的に十分な検討を行った上で決定した案に対して、素人が精緻な科学的根拠もなく反対し、公共の電波を使って稚拙な案をプロパガンダする行為は社会にとって本当に迷惑です。