科学的根拠ゼロ!川勝知事、“自作自演”の言いがかり|小林一哉

科学的根拠ゼロ!川勝知事、“自作自演”の言いがかり|小林一哉

ああ言えばこう言う川勝知事。しかし、その主張に科学的根拠はない。誰かきちんと反論できる者はいないのか…。


川勝知事の“本性

「山梨県の調査ボーリングをやめろ」を繰り返した5月15日の川勝知事会見(静岡県庁、筆者撮影)

「山梨県内のリニア調査ボーリングをやめろ」
県内の地下水が引っ張られる懸念を持ち出して、山梨県内の工事に言い掛かりをつける静岡県の川勝平太知事。あまりにも無謀な主張に、山梨県内だけでなく、さまざまな批判が巻き起こっているが、どんなクレームにも耳を貸さない。

5月に入って、当事者である山梨県の長崎幸太郎知事が「山梨県の工事で出る水は100%山梨県内の水だ。山梨県内のボーリング調査を進めてもらう」などと息巻いて、24日東京で直接、川勝知事に面会したが、結局、ちゃんとしたことは何ひとつ言えずにすごすごと山梨に戻るしかなかった。

26日の会見で再び、この問題を持ち出して、長崎知事は「もし、流出があったとしても微量で影響はない」などの不満を示した後、「リニア建設促進期成同盟会で静岡県の懸念について各県で意見交換する場を提案する」と今度は“他力本願”の姿勢を見せた。

5月31日東京で開催されるリニア建設促進期成同盟会の席で、長崎知事は静岡県のリニア問題について「意見交換の場」を提案するとのことだ。

要は、面と向かって川勝知事に「山梨県内の工事に口をだすな、こんなアホな主張をやめろ」と言えないから、誰か代わりに言ってもらいたいのだ。

長崎知事の手に負えないので、沿線知事の力を借りたい。それが本音なのだろう。
『猫の首に鈴』のたとえ通り、そんな提案をしたとしても、何の役にも立たない。失敗は目に見えている。川勝知事の“本性”を知らないのだ。

リニア沿線知事の代表である大村秀章・愛知県知事もすでに川勝知事とはやり合っているが、どうにもならなかった。うまくごまかされて終わるのが落ちである。
 
本当に、リニア期成同盟会の目的がリニア建設の早期推進ならば、誰かが川勝知事と丁々発止でやりあうしかない。その誰かが見当たらないのだ。
 
このままでは川勝知事をどうにも止められない。

「サイフォンの原理」というトンデモ論

この問題を振り返ってみよう。

2022年10月13日、静岡県は突然、山梨県内のリニアトンネル掘削で、距離的に離れていても、高圧の力が掛かり、静岡県内の地下水を引っ張る恐れがあるため、「静岡県境へ向けた山梨県内の工事をどの場所で止めるのか」を決定する必要があるなどとした文書をJR東海に送りつけたのが始まりである。
 
10月31日に開かれた県リニア専門部会で、当時の難波喬司理事(現静岡市長)が、掘削による周辺の高圧地下水がトンネルに引っ張られるという概念図を示し、“引っ張られ理論”があるかどうかを迫ると、JR東海は「理論上はありうる」と回答した。
 
この回答で、静岡県は、JR東海も静岡県内の地下水が引っ張られる恐れを認めたとして、引き続き、県リニア専門部会で議論することを強引に決めてしまった。
 
12月に入ると、静岡県はトンネル掘削だけでなく、調査ボーリングまで問題にしてしまう。
「水抜きがあり得る高速長尺先進ボーリングが“静岡県の地下水圏”に近づくことは同意できない」という意見書をJR東海に送った。
 
川勝知事は「調査の名を借りた水抜き工事だ」と糾弾して、山梨県内の調査ボーリングを続ければ、「湧水の全量戻し」は“実質破綻”するとJR東海を脅した。

ここから、「山梨県内の調査ボーリングをやめろ」が始まった。
 
調査ボーリングで水抜きがあるのは事実だが、水抜きはトンネル掘削に比べればはるかに微量である。そもそも長崎知事の発言にあるように、「100%山梨県の水」だから、山梨県内の水抜きに何ら問題はない。
 
また地下水は動的な水であり、地下水脈がどのように流れているのか不明だ。所有権を主張する「静岡県の地下水圏」など存在しない。

何よりも、たとえ、地下深くの水が山梨県へ引っ張られても、「全量戻し」の理由だった大井川下流域の利水への影響には全く関係ない。
 
その後、2023年2月28日の知事会見で、地質や地下水の専門家でもない、県リニア事務方の渡邉光喜参事が、静岡県と山梨県の断層帯がつながっていることをJR東海の資料で発見したと発表、その上で、川勝知事が「サイフォンの原理」を持ち出して、静岡県の水が山梨県に引っ張られる“自作自演”の言い掛かりをつけた。

3月20日の県専門部会で、丸井敦尚委員(地下水学)から「サイフォンの原理」などありえないと否定されると、今度は、断層帯がつながっていることによる高圧水の可能性を静岡県は持ち出した。

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