日本政府も中国「派出所」摘発を|楊逸

日本政府も中国「派出所」摘発を|楊逸

私なりの考察を『我が敵「習近平」』(2020年6月、飛鳥新社)にまとめて出版した。それからというもの、中国にいる家族が公安警察に呼ばれ、恐喝されたのは言うまでもない。やがて日本にいる私もひどい仕打ちを受けることになった。


このほど、ニューヨークのチャイナタウンで在米華人を監視するための「派出所」(警察署)を運営していた米国籍の中国秘密警官が2人逮捕された。喜ばしい知らせに拍手を送りながら、ここ数年、我が身に起きた様々なことが脳裏に蘇った。

本出版後に相次いだ嫌がらせ

 中国出身で日本に帰化した私が中国から嫌がらせを受けるようになったきっかけは、全世界を襲ったパンデミックであった。新型コロナウイルスの発源地とされる中国・武漢のロックダウンが伝えられるや、映像もインターネットに流出した。防護服姿の一団が「上の指示」に従い、食料のない人や重病人を老幼に関係なく無理やり家に閉じ込める様子が映っていた。横暴な権力を前にして絶望に泣き叫ぶ人たちの姿にふと、幼少時に家族と共に政治的迫害を受けたかつての自分が重なった。

庶民の人生がなぜ国の政治に翻弄されなければならないのか、という長年の疑問がまた頭に浮かんで、考えずにはいられなかった。そして、中国人の不幸はすべて共産党独裁体制に起因しているのではないかと思い至った。そんな私なりの考察を『我が敵「習近平」』(2020年6月、飛鳥新社)にまとめて出版した。

それからというもの、中国にいる家族が公安警察に呼ばれ、恐喝されたのは言うまでもない。やがて日本にいる私もひどい仕打ちを受けることになった。

「中国大使館に荷物が届いたので取りに来い」という訳の分からない呼び出しを皮切りに、番号非通知の「ワン切り」や無言電話などが頻繁にかかるようになった。携帯電話もパソコンも通信障害か何かでやたらにダウンする。予定の仕事が日本の出版社からキャンセルされたり、外出時に不審な車が付いてきたりすることもあった。また版元の出版社にも「中国大使館広報担当」と称する女性から糾弾する電話が何度もかかってくるといった、怪事件が相次いだ。

知らぬ間に「民族の裏切り者」に

何よりショックだったのは、それまで政治の話をしたことのなかった知り合いが電話をかけてきて、開口一番、「何の証拠があってあんな本を書いたの」と咎めてきたことだ。「本を読んだの?」と聞けば、答えはノーだ。どうも本の出版後、この知人がメンバーになっている中国文化人グループ「在日華人××協会」が中華料理店に集まり、「楊逸批判大会」を開いたらしい。日本で中国批判の本を出版した私は、知らないうちに「国家転覆罪」を犯した「漢奸」(漢民族の裏切り者)に仕立て上げられたのだった。

今回世界的な問題となった中国の「派出所」は、日本にも東京の秋葉原と福岡の2か所あることが確認されたという。ならば日本政府にもすぐ動いてほしい。中国共産党の外国に対する得意技といえば、隙を見つけてはスパイを送り込む「浸透術」だ。とりわけ「経済」とか「文化」とかを冠した民間華人団体の中には、大声で「日中友好」を謳いながら、陰では日本の領土主権を侵害するような行為を働く組織も少なからず存在する。早急に対策を講じるように願いたい。(2023.05.01国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)

関連する投稿


トランプの真意とハリスの本性|【ほぼトラ通信4】石井陽子

トランプの真意とハリスの本性|【ほぼトラ通信4】石井陽子

「交渉のプロ」トランプの政治を“専門家”もメディアも全く理解できていない。トランプの「株価暴落」「カマラ・クラッシュ」予言が的中!狂人を装うトランプの真意とは? そして、カマラ・ハリスの本当の恐ろしさを誰も伝えていない。


習近平「チベット抹殺政策」と失望!岸田総理|石井陽子

習近平「チベット抹殺政策」と失望!岸田総理|石井陽子

すぐ隣の国でこれほどの非道が今もなお行なわれているのに、なぜ日本のメディアは全く報じず、政府・外務省も沈黙を貫くのか。公約を簡単に反故にした岸田総理に問う!


中国、頼清徳新総統に早くも圧力! 中国が描く台湾侵略シナリオ|和田政宗

中国、頼清徳新総統に早くも圧力! 中国が描く台湾侵略シナリオ|和田政宗

頼清徳新総統の演説は極めて温和で理知的な内容であったが、5月23日、中国による台湾周辺海域全域での軍事演習開始により、事態は一気に緊迫し始めた――。


全米「反イスラエルデモ」の真実―トランプ、動く! 【ほぼトラ通信3】|石井陽子

全米「反イスラエルデモ」の真実―トランプ、動く! 【ほぼトラ通信3】|石井陽子

全米に広がる「反イスラエルデモ」は周到に準備されていた――資金源となった中国在住の実業家やBLM運動との繋がりなど、メディア報道が真実を伝えない中、次期米大統領最有力者のあの男が動いた!


【読書亡羊】出会い系アプリの利用データが中国の諜報活動を有利にする理由とは  『トラフィッキング・データ――デジタル主権をめぐる米中の攻防』(日本経済新聞出版)

【読書亡羊】出会い系アプリの利用データが中国の諜報活動を有利にする理由とは 『トラフィッキング・データ――デジタル主権をめぐる米中の攻防』(日本経済新聞出版)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


最新の投稿


【今週のサンモニ】反原発メディアが権力の暴走を後押しする|藤原かずえ

【今週のサンモニ】反原発メディアが権力の暴走を後押しする|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


【読書亡羊】「時代の割を食った世代」の実像とは  近藤絢子『就職氷河期世代』(中公新書)

【読書亡羊】「時代の割を食った世代」の実像とは  近藤絢子『就職氷河期世代』(中公新書)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【今週のサンモニ】臆面もなく反トランプ報道を展開|藤原かずえ

【今週のサンモニ】臆面もなく反トランプ報道を展開|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

米国大統領選はトランプ氏が圧勝した。米国民は実行力があるのはトランプ氏だと軍配を上げたのである。では、トランプ氏の当選で、我が国はどのような影響を受け、どのような対応を取るべきなのか。


【今週のサンモニ】『サンモニ』は最も化石賞に相応しい|藤原かずえ

【今週のサンモニ】『サンモニ』は最も化石賞に相応しい|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。