「みなさまのNHK」ではなく、「俺が偉くなるためのNHK」|和田政宗

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2月20日、NHKの船岡久嗣アナウンサーが、住居侵入の疑いで逮捕された。私は、NHKの事なかれ主義や、組織のいびつな体質がこうした事件の遠因になっていると考える。今回は、これらNHKのおかしな状況について記したい。


NHKの事なかれ主義と組織のいびつな体質

NHKの船岡久嗣アナウンサーが、住居侵入の疑いで逮捕された。私はNHKアナウンサー当時、相撲中継やスポーツ中継で共に実況をした後輩であるので、このニュースに接した時にとても驚いた。当初NHKは逮捕の事実を公表しなかった。2月20日午後に逮捕されていたのに、翌21日の夕方になって各社が報道した後、ようやくNHKは逮捕の事実を公表した。

私は、NHKの事なかれ主義や、組織のいびつな体質がこうした事件の遠因になっていると考える。今回は、これらNHKのおかしな状況について記したい。

NHKのいびつな体質の最たるものは、2010年代の「経営改革」の中で職員の給与は段階的に1割削減されたのに、経営陣である理事の給与が10年も削減されていないことである。理事の年間報酬は2206万円。現在の理事10人はいずれもNHK職員からの内部昇格である。

経営改革を行うのに、自らの報酬に手を付けずに社員の給与だけを削減する経営陣が果たして一般企業にいるだろうか。常識では全く考えられないことをNHK経営陣は行っているのである。

そして、報道機関としておかしな状況は放送現場にも現れている。NHKは「おはよう日本」などで、AI自動音声アナウンスでニュースを伝えているが、ニュースを伝えるということは、本来、極めて高い能力が求められる。

取材者として研鑽し経験を積み、様々な事象を捉えることができる人物が、音声を通じて最終的な伝え手として責任を持って伝えるというのが基本であり、それを高めるために日々努力をする。しかし、何がニュースなのか、事象の重みも分からない自動音声で伝えるというのは、もうNHKは報道機関であることを放棄していると言えるし、アナウンサーを極めて軽視しているということである。

自動音声で十分であるという考えならば、もうアナウンサーは努力をしなくて良いということになるし、そもそもアナウンサーは不要ということになる。「伝え手」とは何なのかということをNHKは全く無視してニュースを制作している。

契約職員に対するセクハラやパワハラ

こうしたおかしな点は、ニュースを誰が伝えるのかという所にも出ている。NHKには職員アナウンサーと、年度契約の契約キャスター(アナウンサー)がいる。契約キャスターは給与が職員に比べて安く、生活もやっとという給与水準の場合もある。

正職員であっても契約職員であっても同様に出演するニュースや番組の現場でなぜこのような給与格差があるかということであるが、NHKの説明は、「担ってもらう役割が違う」「責任が重い部分は正職員が担う」というものである。

こうした説明から、私が現職の時は、朝や夜の5分間のTVニュースであっても職員アナウンサーが必ず伝えていたが、現在では契約キャスターが1人でTVニュースを伝えている時間帯がある。であるならば、同一労働同一賃金で給与は同様にするべきだが、格差は続いている。

契約キャスターで職員アナウンサー以上の能力を発揮する方もいる。だが、トレーニングや育成が職員アナウンサーでは体系立てて行われているのに対して、契約キャスターではほぼ行われない。それは契約キャスターの契約体系では給与が「出演料」となっており、自己責任でスキルを高めるということになっているからである。

安い給与で1年契約、最大3年更新まで。トレーニングも行われないまま責任も負わされる。契約キャスターはこのような不安定な立場に置かれている。NHKもニュースで労働問題を取り上げるが、まず自らの職場の労働環境を省みるべきである。

そして、アナウンサーの職場をはじめ、ディレクターなどニュース・番組の製作現場において、契約職員に対する正職員によるセクハラやパワハラがNHKでは散見される。正職員と契約職員という力関係から生じるセクハラといった特に酷い場合もある。こうしたことが発覚し、正職員側が加害者である場合、正職員側はNHKの他地域の放送局に転勤となるが、雇用は守られる。

しかし、被害を受けた側が契約職員であった場合、結局その放送局に居づらくなり辞めてしまうことが多い。NHKは被害者側が守られる組織になっていない。私はNHK時代も国会議員になってからも、被害者が守られる体制作りを求めてきたが、外部弁護士の相談窓口が創設されたものの、根本的な被害者保護にはなっていない。

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