『安倍晋三 回顧録』は第一級の史料だ
今月発売された『安倍晋三 回顧録』を読み終えた。安倍晋三元総理大臣が、どのように考え、どのように国のため国民のために政策を実行してきたのかが分かる第一級の史料である。
総理時代、そして総理退任後に私にもお話し下さった内容が多く含まれており、改めて安倍元総理が何を考え行動されていたか学ぶことができ、政治家として何度も読み返し、身体に溶け込ませていかなくてはならない内容だと感じた。
私は、安倍元総理から中堅若手議員の中でも特に近しくご指導を頂いたのではないかと思う。元々、昭恵夫人の東日本大震災被災地支援からのご縁であるが、憲法改正や国のあり方に対する考えを評価して下さり、まだ私が第三極野党である次世代の党時代から、食事の機会を頂くなどして様々お話を伺ってきた。
また、私の発信力にも注目して下さり、平成29(2017)年9月に自民党に入党した直後に安倍総理から直接お電話があり、党の広報副本部長に任命され、翌月の衆院選では党の広報統括をさせて頂いた。こうしたことをはじめ、本当に近くで安倍家のご家族ぐるみでご指導を頂き、首相公邸やご自宅で伺ったお話はとてもとても貴重なものであった。
その中で特に安倍総理が私にお話になったのは、外交のあり方や各国首脳とのエピソード、経済とアベノミクス、そして何よりも重視していたのは選挙であった。『回顧録』の中でもこれらについての記述が多数を占めるが、今回の寄稿では、選挙について記していきたい。
『回顧録』にもあるように選挙の勝利によって強い基盤を獲得することが内政外交における強い実行力のために何よりも不可欠であると安倍総理は考えていたからである。
2017年衆院選、脅威だった「小池旋風」
私は平成29(2017)年10月の衆院選で広報統括をさせて頂いたと述べたが、この時の安倍総裁出演の自民党のCMはテレビ、ラジオ、ネットとも私が全てコメントを書いた。広告代理店の方々と一緒に制作にあたり、映像構成などを含めCMの総監督を務めた。
この選挙においては、解散の正式発表の直前に、小池百合子東京都知事が「希望の党」を結党。その年の都議選の大勝利で勢いに乗っていた小池旋風が脅威であった。そのため、自民党として、より明確で国民に届く政策の打ち出しが重要であり、幼児教育・保育の無償化など、それまでの自民党にない思い切った政策が公約として掲げられた。
これらは『回顧録』の中でも述べられているが、私がこの衆院選のCMで安倍総裁に冒頭に言って頂いたのは、「豊かで平和な日本を守り抜く。未来に責任を持つ確かな政策を自民党は実行し続けます」であった。
アベノミクスで暮らしを守り、北朝鮮の脅威には国防力を高め平和を守る。新興の政党の付け焼き刃的な政策と違い、未来に責任を持つ確かな政策を実行し続ける。自民党とは何か、安倍政権とは何かを語りかけてもらった。そして、CMの最後には「ぜひあなたの声を聞かせてください」という言葉を言って頂いた。
当時はメディアやネットなどで「安倍総理は人の話を聞かない」との間違った風説が流れており、あえてこの言葉を安倍総理に言って頂いた。これに対する「アンチ安倍」の人たちの反応は「何を言うか」と激しいものであったが、このコメントを安倍総理は柔和な表情で言って下さったので、一般の方々の反応はとても良かった。
安倍総理は国民にしっかりと政策が届く発信になっているかを常に気になさっており、このCMについては評価して頂いた。