米中間選挙は本稿執筆時点で、上院における民主党の優位維持が決まったものの、下院はまだ大勢判明に至っていない。そこで、以下、最も印象的で示唆深いフロリダ州知事選に焦点を絞って論じたい。日本にとっても参考になる点が多々あると思う。
ぶれない政治姿勢で「時の人」に
フロリダは、選挙のたびに民主、共和両党が競り合う、いわゆるスイングステート(接戦州)の一つである。ロン・デサンティス知事(共和党)も、初挑戦をした前回2018年の知事選では、民主党候補にわずか0.4ポイント差という薄氷の勝利だった。
ところが今回は、約20ポイントの大差で再選を果たしている。1期目の4年間、無党派層に支持を広げるには穏健な色合いを出さねばならないという「セオリー」に反し、明確に保守的な政策を掲げて実行し、左からの激しい攻撃に晒されてきたにも拘わらず、である。
大勝を収めた結果、デサンティス氏は一躍、2年後の大統領選における最有力候補の1人と目されるに至った。
デサンティス氏は11月8日の勝利宣言演説で「世界が狂気に走った時、フロリダは正気の避難所だった」と述べている。これは主に新型コロナ対策を念頭に置いたものと言える。コロナ禍において、デサンティス氏は経済活動の制限を最小限かつ最短期間に留めた。「ステイホーム」指示を出さず、学校における対面授業復活も早かった。マスク着用の強要やワクチン接種の義務化も受け入れなかった。ワクチン接種証明の提示を雇用継続や入場許可の条件にしてはならないとする措置も取った。総じて、マスコミの批判を恐れて「右に倣え」で自由の制限に走る姿勢を拒否した。この結果、フロリダは経済の落ち込みが相対的に小さくて済んだ。
デサンティス氏はまた、中国共産党政権によるスパイ行為を防ぐため、フロリダに本拠地を置く諸大学が中国人の研究者や中国の大学と行う共同プロジェクトに制限を課す州法の制定を議会に促してきた。
自虐史観・脱炭素原理主義との闘い
教育分野においてもデサンティス氏は、米国が建国以来、構造的な人種差別の上に成り立っているとする「批判的人種理論」を公立学校で教えてはならないとの立場を取り、もし教えた場合、児童の親たちがその学区を訴える権利を保証するという法案を主導的に作成している。子供たちが自国を憎んだり、白人と黒人の児童の間に不和の種を蒔いたりする行為に税金が使われることは許されないとの考えからである。選挙後の勝利演説においてデサンティス氏は、この政策に触れ、「我々は洗脳ではなく教育を選んだ」と表現している。
小学3年生までの教室で、性的指向や性同一性について「指導」することを禁じる法案への支持も表明している。
エネルギー分野でも脱炭素原理主義者と闘っている。フロリダ州内のいくつかの市が、電源は再生可能エネルギーのみ認める方針を打ち出したのに対し、州内自治体はいかなる電源も禁止ないし制限してはならないとの州法を議会保守派と協力して成立させた。参考にしたい。(2022.11.14国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)