怒りに震える川柳
先だって、安倍総理が亡くなった翌日に朝日新聞デジタルが「森友・加計、桜…『負の遺産』真相不明のまま 安倍元首相が死亡」とタイトルをつけた記事を配信したことを批難した。
〈そこには銃撃されて亡くなった一国の宰相に対する一片の哀悼の気持ちも、敬意もない〉と書き、そんな記事を見逃したデスクや編集長の見識を疑った。
しかし、朝日新聞の「反安倍」はそんな、なまやさしいものではなかった。森友、加計や、桜を見る会偏向報道で、当然、そんなことはわかっていなくてはいけなかったのに甘かった。
朝日新聞はどこまで安倍元総理を貶めれば気が済むのか。
7月16日、朝日新聞「朝日川柳」欄。
書き写していても怒りに震える。
選ばれた六句は以下。
「疑惑あった人が国葬そんな国」
「利用され迷惑してる『民主主義』」
「死してなお税金使う野辺送り」
「国葬って国がお仕舞いっていうことか」
「動機聞きゃテロじゃ無かったらしいです」
「ああ怖いこうして歴史は作られる」
そして☆印の優秀賞は、
「忖度はどこまで続く あの世まで」
選者「西木空人」の正体
掲載された七句全部、安倍元総理の死をおちゃらかしている。
そこには一国の総理、それも銃撃されて亡くなった総理に対する、一片の同情もない。ただただ安倍元総理とその死を貶めているだけで、ユーモアやセンスのカケラも感じられない。
隣の「かたえくぼ」欄まで悪乗りして、
「『国葬』
あれもこれも葬る場
――新解釈辞典」
前回も書いたが、こんなものを朝日新聞の幹部、編集局長や社長が許しているのか。
安倍元総理と親しいと言われている曽我豪編集委員はどう思っているのか。ぜひ伺ってみたい。
16日だけではない。前日15日の同じ「朝日川柳」欄も同様だった。
「銃声で浮かぶ蜜月政と宗」
「銃弾が全て闇へと葬るか」
「去る人の濁りは言わず口閉ざす」
「これでまたヤジの警備も強化され」
選者の「西木空人」はむろんペンネーム。
本名は栗田亘元論説委員。社会部出身で、95年から2001年にかけては「天声人語」を担当。2000本近く書いたというから、朝日の中ではその文才を評価されていたのだろう。
「天声人語」と言えば、よくも悪くも朝日新聞の看板コラム。初期の内藤湖南、長谷川如是閑から始まって、戦後は嘉治隆一、荒垣秀雄、入江徳郎、深代惇郎など、皆、それなりの(賛否は別として)識見を持ち、それなりの文章家だった(と思う)。
栗田氏も書ける記者なのだろう。漢文に関する著書も何冊かあるが、著書の中には『リーダーの礼節』(小学館刊)なんて本も。
こんな時に、こんな川柳ばかり選んで掲載する人物が「礼節」とはちゃんちゃらおかしい。
自らの著書でも読み返して、もう少し「礼節」を学んだらどうか。
月刊『Hanada』編集長。1942年、東京生まれ。66年、文藝春秋入社。88年、『週刊文春』編集長に就任。部数を51万部から76万部に伸ばして総合週刊誌のトップに。94年、『マルコポーロ』編集長に就任。低迷していた同誌部数を5倍に伸ばしたが、95年、記事が問題となり辞任、1年後に退社。以後『uno!』『メンズウォーカー』『編集会議』『WiLL』などの編集長を歴任。2016年4月より現職。