妄想に近い日本国憲法前文
ロシアによるウクライナ侵略が止まらない。ありとあらゆる手段を通じて停戦させ、ロシアを撤兵させなくてはならないとともに、今回の侵略における教訓は、自らの国は自らの手で守ることが大前提であるということだ。
まもなく5月3日の憲法記念日を迎える。現行憲法の前文には「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とあるが、これは妄想に近いということが改めて明らかとなった。
また、現行憲法はそもそもGHQが当座しのぎで作った連合国的価値観の憲法であるから、日本国民が国を守り国のあり方を示すために憲法改正を行うのは当たり前のことである。
改めて、現行憲法の成り立ちを整理したい。昭和20年、日本を占領しGHQ(連合国軍総司令部)のトップとなったマッカーサーは、新憲法の作成を周囲に示唆した。その意向を受け日本政府は、3ヶ月かけて新憲法の草案を作り上げた。
ところが、この草案はGHQに拒否されたうえ、「GHQで原案を作るから、それをもとに細部を修正して憲法を作るべきである」となった。そこからGHQ内部で急ピッチで作られたのが、現在の日本国憲法である。
GHQによる草案作りの実質的な作業日数は1週間とされ、さらに最近の研究では「3日で作った」という説も出てきている。突貫作業のなかでは、ソビエト憲法やワイマール憲法なども参考にされたため、これらの憲法の条文を「コピペした」と指摘される内容が現行憲法にはいくつも存在する。さらに、かなりアバウトに作られた部分もあった。
憲法9条はなぜできたのか
例えば憲法改正については、「国会各議院の三分の二の賛成によって発議する」となっているが、極めて重要な部分であるのに綿密に検討されたわけではないことが西修駒大名誉教授などの研究で明らかになっている。
この部分の起草にあたっていた人物が作業の片手間で、「過半数かな? 3分の2かな?」と隣の席の人物に聞いたところ、「とりあえず3分の2にしておいたら?」と返答したのでそうなったということが、西修さんなどの学者が当時のGHQ関係者に取材した結果、判明している。
起草にあたったメンバーも、大急ぎで作った日本国憲法はあくまで「間に合わせ」という意識があったようで、取材の際、「えっ、あの憲法をまだ改正もせず使っているんですか?」と驚かれたという。
このようにGHQから渡された憲法草案に、急いで修正を加え、帝国議会での審議もバタバタに成立したのが、現在の日本国憲法である。そして、国を守るうえで足かせとなっている憲法9条はなぜできたのか。
米国の意図は、日本の非武装化であった。日本軍はあまりに強く、ようやく打ち破り日本を占領した米国は、「もう二度と日本とは戦いたくないから、日本に武装はさせない」という考えに至った。では、日本が攻撃されたら誰が日本を守るのか。それは米軍が守る。大規模災害が起きたらどうするのか。それも米軍が出動して対応にあたるというものであった。
しかし、その後、朝鮮戦争が勃発すると状況が変わる。米軍は日本に充てていた人員を朝鮮半島に振り向けることとなる。そこで、日本に警察予備隊を創設させ、その後、保安隊、自衛隊と改編されたのである。
通常の考えであれば、自衛隊が出来た時に憲法改正をすべきなのだが、憲法改正勢力は衆参それぞれで3分の2に達していなかった。3分の2を取れたのは、平成25年の参院選後が初めてであり、それまでは憲法改正をしようにも困難な状況だった。