300両の戦車では日本を守れない
そして、もうひとつの抑止力として重要なのが、これまであまり論じられてこなかった戦車である。
我が国の戦車は、タイヤ型の機動戦闘車への転換により、現防衛大綱では300両の保有となっている。しかし、ロシアの北海道侵略に備えるならば、ロシアは約3000両の戦車を保有しており、我が国の台数とは比較にならない。ロシアと同数の戦車を保有しろとまではいわないが、冷戦期に1000両以上保有していたことを考えれば、我が国の戦車はあまりに少なくなってしまった。
なぜいま、戦車が必要なのか。それはロシアが我が国国土を、陸上兵力を投入し侵略する場合、我が国の保有台数を上回る戦車を投入しなければ優勢にはならないからだ。また、我が国の10式戦車といった最新鋭の戦車に対しては、同等レベルかそれ以上の戦車を投入しなければ制圧できない。これは軍事の常識である。
一方で、さらに、侵略する相手に対し、対戦車ミサイル「ジャベリン」のような兵器があれば戦車を破壊できるではないかという論もあるが、ロシアの進軍を止めることはできても、上陸後に反撃しなければ我が国国土からは撃退できない。そのためには、戦車が最も重要である。
これまでは、中国の侵略に備えるため、海空シフト、海空重視の防衛力整備が叫ばれてきた。これはこれで重要なことであるが、陸上部隊による侵略を考えるならば、戦車をもう一度見直すべきだ。これはロシアの北海道侵略のみならず、中国に対する南西諸島侵略の際にも有効であるし、万が一の本州上陸侵略ということを考えた時にも戦車台数があるということは抑止力となる。
ロシアのウクライナ侵略により、我が国の安全保障環境は大きく変化している。ゼロベースで我が国はいかに国防を行っていくかを考え、構築していくことがやはり必要である。