「日本の平均賃金は韓国以下」の嘘と罠
日本人の常識がくつがえる全17章
このところ日本では、「国民1人当たりの国内総生産(GDP)で、日本は既に韓国に抜かれている」「平均賃金も既に日本より韓国の方が高くなっている」といった〝お噺(はなし)〟がよく聞かれる。
振り返れば40年ほど前にも「昇龍のような勢いの韓国経済が間もなく日本を追い越す」といった〝お噺〟が出回った。
今日と40年前の〝お噺〟をじっくり見ると、その語り手には3つの共通点がある。
1つは、国際機関の集計値(元をただせば、韓国政府や団体が取りまとめた数字)に、何の疑いも持たずにいることだ。
2つは、韓国の政治・社会状況(例えば少子化の激しさや、棄国型移民願望の強さ)に、ほとんど関心を持っていないことだ。
3つは、彼らの心情が「だから日本なんてダメなのさ」といったマゾヒズムに傾き、韓国側の対日サディズムと、うまく噛み合ってくることだ。
端的に言えば、韓国の雇用・失業、勤労者所得の統計は、美容整形手術を施したうえに厚化粧をしている。私はそれを「韓数字」と呼んでいる。
青年層の失業は韓国の大問題だ。だから韓国の若者は「嫌いな国=日本」での就職口さがしにまで乗り出している。15~29歳のニート比率は20%を超えている。
こうしたことを少し知っただけでも、韓国政府が公表する失業率(文在寅政権下では、ほとんどが3~4%)は「おかしい」と思うのが普通ではなかろうか。
こうした事実は、韓国紙の日本語サイトを時たま見ているだけでも気付くはずだ。〝お噺〟を語る人々は、そうした努力もしていないのだろうか。
韓国の大卒男子の初就職年齢は平均30歳だ。兵役もあるが、就職浪人の期間が長いことが大きく影響している。めでたく大手財閥系に就職できるのは、多めに見積もっても4%程度だ。しかも、大手財閥系の場合は、50歳前後になれば大部分が「肩たたき」に遭って追い出されてしまう。
日が当たる職場で働けるのは、せいぜい20年。日本と韓国の勤労者の「生涯賃金」「生涯収入」を比べると、どうなるのだろう。
韓国の政府が、嘲笑されるような韓数字を次々に発表するのは、大統領の権限があまりにも強いため、官界が挙げて「ご意向忖度」を当たり前のことと思っているからだ。
韓国の大統領は3300ものポストの直接の任命権者だ。「統計の基準変更」に抵抗した統計庁長はあっさり解任された。大統領の〝お友達〟の権力型犯罪の捜査を指揮した検察幹部は左遷され、1年間に3度の任地替えを命じられた。
文在寅氏は「雇用大統領」と自称して大統領府に乗り込んだ。もちろん「雇用問題を解決する大統領」という宣言だった。
であれば、労政当局は様々な新職種を考案して、失業対策事業として振りまき、名目上の雇用率アップに精を出す。大学構内を歩き回って、講義がない教室の照明を消して回る「電気管理士」は最も話題になった新職種だ。
名目上の雇用率アップさえ達成して「大統領の覚えめでたし」となれば、30・40歳代の正規職労働者数が減少していることなど、労政当局にとってはどうでもよいのだろう。韓国とは、そういう国なのだ。
日本と韓国の間では、新たな「歴史戦」が始まる。佐渡島金山の世界遺産への登録問題だ。日本政府部内では「韓国が強制労働の現場だとして登録に反対している」ことに配慮してユネスコへの登録推薦を見送る雰囲気が支配的だったと伝え聞く。
見送ったら韓国は感謝するどころか、「日本は強制労働させていた事実を認めた」として大攻勢をかけてくる。慰安婦問題に関する河野談話と同じパターンに陥る。
そんなことも読めずに、「韓国への配慮」論が一時的にせよ、日本政府を覆ったのは、日本全体として対韓ウォッチが甘くなっているからではないのか。「日本は既に韓国に抜かれている」といった〝お噺〟が広まるのと根は同じように思える。
隣国の状況は、常に冷厳な視点でウォッチを続けなければならない。なぜなら、戦争をする相手はだいたいのところ隣国なのだから――そんな問題意識で本書『韓国自爆』をまとめた。
本書が読者の対韓ウォッチの一助になることを願っている。
(『韓国自爆』まえがき より)