民主主義への冒涜であり重大な挑戦
外国籍の住民も日本国籍の住民と同じ条件で投票権を認める東京都武蔵野市の住民投票条例案。松下玲子市長をはじめとする市当局の拙速な進め方や、憲法が否定している外国人参政権に実質的にあたるとの懸念から市民の反対意見が根強いなか、今月中にも市議会において採決が行われる見通しとなっている。
そうしたことから、今月5日に吉祥寺駅北口で行われた「武蔵野市住民投票条例案の撤回を求める」街頭演説会に参加したのだが、ひどい妨害を受けた。しかも、力ずくで演説を阻止しようという妨害活動を、その場に来ていた神奈川新聞の石橋学編集委員が擁護した。
政党活動や政治活動を妨害する勢力を肯定するもので、民主主義への冒涜であり重大な挑戦である。今回は、問題の多い武蔵野市の住民投票条例案と街頭演説会で起きたことについて記したい。
まず、問題となっている武蔵野市の住民投票条例案だが、あまりに性急に、ほぼ武蔵野市民に周知されず、松下玲子市長など市当局が推し進めようとしている。
住民投票条例の骨子案が出てきたのが今年2月、素案は8月に発表されたが、市民の多くはその存在を知らず、市民意見交換会の参加者はわずか13人。ところが11月12日になって急に、11月中旬から12月にかけて開かれる武蔵野市議会に条例案を提出するという発表がなされた。
憲法上否定されている「外国人参政権」
この条例案についてなぜ熟議が必要かであるが、まず、個別型でなく常設型の住民投票条例だということである。個別型であれば、住民投票にかけるテーマについてその都度議会で議論し個別に条例を作成し、住民投票を行うという流れになる。
しかし、常設型だと、いつでも満18歳以上である住民の4分の1が求めれば、「武蔵野市政に関する重要事項」なら、どんなテーマでも住民投票が行えるということになる。すなわち、「市政の重要事項」であれば、安全保障でもエネルギー政策でも構わないというものだ。
そして、当然住民投票であるから、市議会や市の当局は結果に実質的に拘束される。すでに市政の重要事項を審議する市議会はあるわけで、市議会の存在意義はどうなるのかという問題をはらんでいる。
さらに、日本では憲法上、外国人参政権は認められていないが、武蔵野市の住民投票条例案では、3カ月以上居住していれば外国籍であっても住民投票権を得ることになっている。
憲法第15条では参政権は「国民固有の権利」としており、平成7年の最高裁判決でも外国人参政権は憲法上否定されている。しかし、今回の条例案では外国籍の住民にも投票権を認めるとともに住民投票が常設型であることから、実質的な外国人参政権にあたるという懸念が出ている。