半数以上が「立憲共産党」は問題
今回の衆院選で、自民党は事前に大苦戦が伝えられるなか、議席を減らしたとはいえ何故261議席を獲得できたのか。
11月8日の朝日新聞朝刊1面に、野党と野党支援者にとって衝撃的な世論調査が掲載された。朝日新聞の世論調査は、反自民的な傾向が他紙に比べて出やすいが、衆院選で自民党が過半数を大きく超える議席を獲得したことは「よかった」と答えた人が47%で、「よくなかった」と答えた人34%を大幅に上回ったのである。
さらに、立憲と共産が安全保障政策などで主張の異なるまま選挙協力することに「問題だ」と答えた人が54%おり、「そうは思わない」と答えた人31%をこちらも大幅に上回った。
実はこうした国民の心理が、自民党261議席獲得に繋がったと分析できる。
今回の衆院選では、最終盤まで自民党の苦戦が伝えられ、単独過半数233も危ういのではないかとされた。それが最終的に261議席となったのは、この世論調査のように、有権者の「万が一でも政権を立憲・共産側に取られてはならない」という思いが大きく作用したからである。
これは、期日前の投票者数と、投票日当日の投票者数の動きからも見て取れる。今回の衆院選の投票率は55.93%で、前回・平成29年の選挙より2.25%上回った。このうち、過去2回連続で増加していた期日前投票を行った人の数は、前回より3.7%減った。一方で、投票日当日の投票者が増えたことにより、最終的に投票率は前回4年前の選挙を2.25ポイント上回ったのである。
期日前投票の期間は、自民党が議席を大きく減らす傾向の出口調査になっていたため、各メディアも自民党は単独過半数233ぎりぎりの攻防と伝えた。世論調査でも同様の傾向であり、メディアによっては、220議席台もあり得ると読んでいた社もある。
しかし、こうした状況が伝えられることによって、有権者の多くは、絶対に立憲・共産側に政権交代させてはならないと、自民党支持者のみならず無党派層で政権交代を危惧した方も、投票日当日になって積極的に投票所に足を運んだのである。
これは、投票日当日に朝日新聞が行った出口調査からも明らかで、無党派層の比例区投票先は、立憲21%に対して自民19%。前回4年前の選挙では、立憲は無党派層で8%自民を上回っていたから、その差は歴然としている。
さらに、各年代の投票傾向を見ると、若い世代ほど自民党への支持が高い傾向が続いており、これが261議席獲得の原動力となった。これも投票日当日の朝日新聞の出口調査では、比例区投票先は10代で自民が42%、立憲・共産が合計で22%。20代で自民40%、立憲・共産20%。30代が自民37%、立憲・共産19%。40代が自民35%、立憲・共産22%。50代は自民35%、立憲・共産26%。60代、70代では投票先が拮抗し、60代で自民33%、立憲・共産32%。70代で自民37%、立憲・共産33%となっている。
維新の躍進と自民党がこれからやるべきこと
年代別投票率はまだ出ていないが、出口調査の結果からは自民党支持が強い若い世代が投票に多く行ってくれたからこそ今回261議席に踏みとどまったと分析できる。
これは立憲民主党への投票を見た場合からも言える。比例区で立憲に投票した人は、前回と比べると、70歳以上が20%から24%に増えたものの、30~50代は減らしており、この数字からも50代以下の自民党支持が強い世代が投票所に足を運んだからこその結果だと言える。
そして、出口調査からは維新の勢いも明かであり、30代の投票先は維新が16%で立憲の14%を上回り、40代でも17%と同数になった。なお、11月6日、7日に行われたJNN(TBS系列)の世論調査では、政党支持率で維新が9.8%と、立憲を0.5%上回り、自民に続き第2位となっている。新型コロナ禍や緊迫した安全保障環境のなか、分断や対決を煽る政党や共闘勢力を、国民の多くは「そうであってはならない」と否定しているのだ。
しかし、冷静に分析しないとならないのは、維新の躍進とともに、小選挙区においては立憲・共産の野党共闘の効果が見て取れることだ。自民党は比例代表で、前回の66議席から72議席と議席を伸ばした。近畿ブロックを除いて前回より得票を増やしており、多くの有権者が「自民党頑張れ」と投票してくれたことが分かる。
一方で、小選挙区は議席を前回の218から189に減らした。自民は大阪で、前回獲得した小選挙区10議席をすべて維新に取られたが(兵庫でも維新に1議席取られる)、立憲・共産の野党共闘勢力にも18議席分奪われたことになる。
こうしたことから自民党としてこれからやらなくてはならないことは何か。対維新では、規制改革の実行の本丸は自民党政権であり、政府与党として、安倍政権、菅政権の路線を継承し、規制改革や改革を政策としてしっかり訴え実行していくこと。そして、所属各議員が立憲・共産が共闘してもしっかり勝てる地道な地元活動、支持拡大活動をすることである。
しっかりと今回の選挙結果を受け止め、次回の衆院選の勝利に繋げなくてはならない。そして、来年の参院選も同様である。参院選においてはこれまで、野党共闘の枠組みによって1人区で苦杯をなめてきた。国民民主党の動向も注視し、気を引き締めて臨まなくてはならない。