ついに“転機”を迎えた公明党|門田隆将

ついに“転機”を迎えた公明党|門田隆将

安全保障上重要な法案の成立を阻み、中国擁護の姿勢を崩さない公明党。 なぜ公明党はこれほど中国の味方をするのか――その核心に迫る!


ウイグル人権侵害に「証拠がない」!?

公明党に転機が訪れている。支持母体である創価学会も同様だ。

3月30日、公明党の山口那津男代表が記者会見でこう語ったのだ。

「わが国が制裁措置を発動するとすれば、中国の人権侵害に対して根拠を持って認定できるという基礎がなければならない。それがないままやるなら、いたずらに外交問題を招きかねない。中国は日本にとって最大の貿易相手国であり、また幅広い日中の交流の歴史がある。中国との国際的な緊張の高まりや衝突を回避し、緊張を収められるような積極的な対話を、日本こそ主導すべきではないか」

支持母体の創価学会、特に正義感あふれる若き創価学会員はこれを許すのか――と咄嗟に思ったのは私だけではあるまい。
 
山口氏はウイグル人権侵害に「証拠がない」と言っている。世界中でそんなことを言っているのは、中国と公明党だけだ。
 
強制収容所への連行、監禁とレイプや不妊手術の強制など、亡命ウイグル人によって告発される具体的な事例は夥しい数に上っている。直接の被害者や、実際に強制不妊手術に携わった女性医師の亡命後の具体的な証言もある。すべて覚悟をもって「実名」と「顔」を晒しての勇気ある告発である。
 
さらに決定的なのは、中国側の国家統計だ。『中国衛生健康統計年鑑』によれば、2014年から18年にかけて、ウイグルでは女性の不妊手術数は19倍、男性は12倍になったことが同年鑑に詳細に記述されていた。
 
加えて英BBCを中心に深層レポートが数多く存在し、今年一月十九日には、米国が中国のウイグル人へのジェノサイド認定を行なった。各国も亡命者を中心にヒアリングを断続的に行なっており、ジェノサイドの事実は十分すぎるほど証明されている。

これを基に米、英、EU27か国、カナダが中国への制裁を発動し、豪とニュージーランドが制裁を歓迎する共同声明を発表したのである。
 
山口氏の言葉に「なぜ公明党はこれほど中国の味方をするのか」、あるいは「創価学会員は公明党のウイグル決議反対を本当に支持しているのか」との声が湧き起こったのも当然だろう。

実際、公明党の反対で菅首相訪米までに国会決議を実現するという議員たちの願いは葬られた。政治部デスクによれば、

「中谷元・元防衛相と国民民主党の山尾志桜里氏を中心に超党派の『人権外交を超党派で考える議員連盟』が設立され、共産党まで非難決議を支持しました。しかし公明が国会決議を嫌がり、これを阻止したんです。安全保障上重要な土地周辺の利用を規制する『重要土地等調査法案』も公明党の反対で骨抜きになり、安倍前首相の“遺言”ともいえる敵基地攻撃能力も公明の反対でうやむやにされました。自民の良識派は“これでは中国に支配されているのと同じだ”と嘆いています」

 

それでも中国を支持するのか

確実にいえるのは、中国の代弁者たる公明党に「転機」が訪れていることだ。人権・平和の看板が中国支援の中で今後も通用すると本当に思っているのか、という点である。

 確かに公明党と中国の関係は深い。昭和43年9月8日、日大講堂での創価学会第11回学生部総会で池田大作会長がぶち上げた「日中国交正常化提言」が始まりだ。あの文化大革命の混乱の最中であるにもかかわらず、「中国との友好」「中国の国連加盟」「台湾切り捨て」を池田氏が提唱したのだ。

3年後の昭和46年7月、竹入義勝公明党委員長の訪中がやっと実現し、周恩来首相との会談が行われた。ここで周氏から国交回復三原則が示される。まさに「一つの中国」論である。

竹入氏はこれを受けて帰国後、国会で当時の佐藤栄作首相に「なぜ中国と関係を結ばないのか」と激しく迫った。

そして激動する国際情勢は、同年10月に中国の国連加盟と台湾の追放という「アルバニア決議案」を可決し、公明党をあと押しするのである。
 
翌年7月に田中角栄内閣が成立すると、竹入氏は即座に訪中し、周首相と再び会談。「台湾との関係を切るなら戦時賠償は求めない」との中国の意向を竹入氏が持ち帰り、九月の田中訪中・国交正常化に結びつけるのである。
 
中国との友好関係樹立、そして台湾切り捨てに貢献した公明党に中国は大いなる利用価値を見出し、以後、公明・創価学会の指導者池田大作氏に124もの名誉博士号、名誉教授の称号を贈り続け、同党を自らの主張と“一体化”させることに成功したのである。
 
安保法制にも憲法改正にも消極的な公明党の立場は、これを知れば腑に落ちるだろう。
 
問題は若き創価学会員たちだ。人命を踏みにじり、人権弾圧と力による現状変更で日本に迫る中国を、それでも支持するのか。若き学会員が幹部たちの行動に疑問も感じず、従い続けるなら、創価学会だけでなく日本自体が明るい未来を展望することは無理だろう。

(初出:月刊『Hanada』2021年6月号)

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