瀬戸内みなみの「猫は友だち」 第2回
「猫たちはどうなるんだろう?」
Mさんが亡くなった。昨年12月の暮れももう押し迫ったころで、彼を知っているひとたちの間には衝撃が駆け巡った。
というのも、Mさんは還暦は過ぎていたがいたって元気に日本語学校の教師として働いていて、ある日突然いなくなるなんて誰も想像もしていなかったからだ。
それともうひとつ。知人たちが彼の死に驚くと同時に、おそらく一斉に思ったことがある。
「猫たちはどうなるんだろう?」
Mさんが暮らしていたのは瀬戸内海に浮かぶ小さな島、岡山県・真鍋島だ。美しく穏やかな海、風情のある古い建物や校舎などの観光資源にも恵まれて、昔から国内のみならず海外からも訪問客の多いところである。
さらに最近では、猫がたくさんいる猫島としても有名になっている。Mさんが元気だったころ、島の人口約190人に対して猫は100匹いるといわれていた。観光客の中でも、島の風景やおいしい魚には目もくれず、ひたすら猫だけを追いかけるひとが格段に増えたという。ネットで検索すればすぐに、
「ニャンコたちのパラダイス!」
「猫さんと触れ合って癒されよう♡」
などという見出しとともに、猫写真をいくらでも見ることができる。
10年ほど前に移住して以来、この島じゅうの猫たちに目を配っていたのがMさんだったのだ。
(写真撮影/中室敦美)