3月17日、札幌地裁である判決が出た。3組の男性カップルと1組の女性カップルが婚姻届を出したが、民法や戸籍法の規定で同性婚が認められてゐないとして受理されなかつた。そこで、民法や戸籍法の規定は憲法で保障された「婚姻の自由」や「法の下の平等」に反するとして、平成31年(2019年)2月、札幌地裁に、民法や戸籍法の規定を変更しない国の責任、即ち国家賠償を求めて提訴した。その判決である。
判決は原告らの請求を認めず、原告が敗訴した。しかし、マスコミは、同性婚を認めないのは憲法違反であると裁判所が判断したと一斉に報道し、原告勝訴であるかのような印象を与へた。
「憲法違反」のおかしな根拠
確かに判決文では、民法や戸籍法の規定が「法の下の平等」を定めた憲法14条1項に違反するといつてゐるが、国会がそれらの改正を怠つてゐたとは直ちにいへず、国家賠償を認めることはできないといふ。
国は、「同性婚を認めないことが憲法違反であると裁判所が認めた」「勝つた、勝つた」と原告やその支援者からはやし立てられても、勝訴であるから控訴できない。
判決が、民法や戸籍法の規定を憲法違反であるとする根拠は、欧米などの例を引いて、婚姻が異性間にのみ成立するものではないからだといふ。判決はまた、我が国の婚姻が、子供のできない、又は子供をつくらない夫婦でも認めてゐることからすれば、男女が夫婦の共同生活を送ることを目的とし、必ずしも子を得ることを目的としたものではないから、同性間のカップルとの間に差があるのは不合理であるといふ。しかし、婚姻は、男女の性的結び付きにより子供をつくり家庭を継続させることが主たる目的であり、たまたま子供ができなくても、又は子供をつくらなくても婚姻を認めてゐるだけであつて、判決は論理の飛躍である。
婚姻制度の根幹を変えるな
我が国の婚姻は憲法24条にあるとほり、「両性の合意」によつて成立するものであり、欧米とは異なる。そもそも欧米では、同性間の性的関係は犯罪であつたのであり、そこからの抵抗運動として同性婚容認の運動が出てきた面がある。我が国では、同性間の性的関係は、正常とはみなされなかつたとしても、犯罪ではなかつた。欧米のやうに同性婚を認めよといふのは無理である。
同性間のカップルが受ける主な法的不利益は相続に限られるのではないか。他に同性間のカップルが受ける不利益があるとしても、それぞれの場で解決できるものであり、婚姻は異性間に成立するという制度の根本を変更すべきではない。(2021.03.22 国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)