『「目に見えぬ侵略」「見えない手」副読本』㉓国際世論を意のままに作り変える

『「目に見えぬ侵略」「見えない手」副読本』㉓国際世論を意のままに作り変える

中国共産党の「浸透工作」を全篇実名で解明し、日米欧を震撼させた『目に見えぬ侵略』『見えない手』。その入門書と言える『副読本』を弊社より発売! 2冊で合計900ページ以上の大著から、奥山真司氏監修のもとエッセンスを抜き出し、見開き40項目だけでシンプルに解説。その中から三項目を特別公開。一つ目はこちら!


米国社会の分断と混乱が中国を利する

ブレグジットに象徴される欧州連合(EU)内部での不和、そして2016年のドナルド・トランプの大統領選での勝利は、北京にとって米欧間の同盟関係を弱め、民主主義諸国の結束をさらに弱める戦略的なチャンスとなった。

人種や移民、マイノリティの権利をめぐるリベラルの攻勢は米国社会の分断をますます深め、2度の大統領選でトランプが民主党候補との間で起こした混乱は、「民主主義制度は、必然的に混沌と非効率性をもたらす」という中国共産党の主張を証明するものとなった。

いまやアメリカの衰退と分断は誰の目にも明らかで、国際社会の信頼と協力の崩壊を救い出すのは、アメリカの覇権主義と単独行動主義に対抗する「多国間主義の守り手」中国だ、と印象付ける好機と見たのだろう。

世界の諸問題を解決する最良のアイデアは「中国モデル」に従うことだと、他国に公然とアピールしている。

コロナを全体主義で抑えこんだ中国共産党の政治・経済システムは、欧米の民主政治・資本主義経済より優れているとの主張は、西側各国がコロナ禍を制御できず、経済停滞と貧困増大に苦しむ中、説得力を備えつつある。「中国的解決策」がコロナ後の世界を制する可能性が高まってきた。

2016年7月、国際仲裁裁判所が中国の南シナ海の島々の領有の主張を「国際法上の法的根拠がなく、国際法に違反する」との判断を下した後、対外連絡部は、中国の立場は120カ国の240を超える政党と、世界中の280の著名シンクタンクやNGOから、国際世論の多数派の支持を得ていると主張した。

強大な経済力を持つ一党独裁国家の攻勢に、自由な政治・経済秩序を当然視してきた民主主義諸国の弱い同盟は明らかに劣勢となりつつある。中国共産党は、自分たちはもう世界の世論を変えられる十分な力を持っていると信じているのだ。

目に見えぬ侵略 中国のオーストラリア支配計画

見えない手 中国共産党は世界をどう作り変えるか

関連する投稿


トランプの真意とハリスの本性|【ほぼトラ通信4】石井陽子

トランプの真意とハリスの本性|【ほぼトラ通信4】石井陽子

「交渉のプロ」トランプの政治を“専門家”もメディアも全く理解できていない。トランプの「株価暴落」「カマラ・クラッシュ」予言が的中!狂人を装うトランプの真意とは? そして、カマラ・ハリスの本当の恐ろしさを誰も伝えていない。


習近平「チベット抹殺政策」と失望!岸田総理|石井陽子

習近平「チベット抹殺政策」と失望!岸田総理|石井陽子

すぐ隣の国でこれほどの非道が今もなお行なわれているのに、なぜ日本のメディアは全く報じず、政府・外務省も沈黙を貫くのか。公約を簡単に反故にした岸田総理に問う!


中国、頼清徳新総統に早くも圧力! 中国が描く台湾侵略シナリオ|和田政宗

中国、頼清徳新総統に早くも圧力! 中国が描く台湾侵略シナリオ|和田政宗

頼清徳新総統の演説は極めて温和で理知的な内容であったが、5月23日、中国による台湾周辺海域全域での軍事演習開始により、事態は一気に緊迫し始めた――。


全米「反イスラエルデモ」の真実―トランプ、動く! 【ほぼトラ通信3】|石井陽子

全米「反イスラエルデモ」の真実―トランプ、動く! 【ほぼトラ通信3】|石井陽子

全米に広がる「反イスラエルデモ」は周到に準備されていた――資金源となった中国在住の実業家やBLM運動との繋がりなど、メディア報道が真実を伝えない中、次期米大統領最有力者のあの男が動いた!


【読書亡羊】出会い系アプリの利用データが中国の諜報活動を有利にする理由とは  『トラフィッキング・データ――デジタル主権をめぐる米中の攻防』(日本経済新聞出版)

【読書亡羊】出会い系アプリの利用データが中国の諜報活動を有利にする理由とは 『トラフィッキング・データ――デジタル主権をめぐる米中の攻防』(日本経済新聞出版)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


最新の投稿


【今週のサンモニ】反原発メディアが権力の暴走を後押しする|藤原かずえ

【今週のサンモニ】反原発メディアが権力の暴走を後押しする|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


【読書亡羊】「時代の割を食った世代」の実像とは  近藤絢子『就職氷河期世代』(中公新書)

【読書亡羊】「時代の割を食った世代」の実像とは  近藤絢子『就職氷河期世代』(中公新書)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【今週のサンモニ】臆面もなく反トランプ報道を展開|藤原かずえ

【今週のサンモニ】臆面もなく反トランプ報道を展開|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

米国大統領選はトランプ氏が圧勝した。米国民は実行力があるのはトランプ氏だと軍配を上げたのである。では、トランプ氏の当選で、我が国はどのような影響を受け、どのような対応を取るべきなのか。


【今週のサンモニ】『サンモニ』は最も化石賞に相応しい|藤原かずえ

【今週のサンモニ】『サンモニ』は最も化石賞に相応しい|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。