米国社会の分断と混乱が中国を利する
ブレグジットに象徴される欧州連合(EU)内部での不和、そして2016年のドナルド・トランプの大統領選での勝利は、北京にとって米欧間の同盟関係を弱め、民主主義諸国の結束をさらに弱める戦略的なチャンスとなった。
人種や移民、マイノリティの権利をめぐるリベラルの攻勢は米国社会の分断をますます深め、2度の大統領選でトランプが民主党候補との間で起こした混乱は、「民主主義制度は、必然的に混沌と非効率性をもたらす」という中国共産党の主張を証明するものとなった。
いまやアメリカの衰退と分断は誰の目にも明らかで、国際社会の信頼と協力の崩壊を救い出すのは、アメリカの覇権主義と単独行動主義に対抗する「多国間主義の守り手」中国だ、と印象付ける好機と見たのだろう。
世界の諸問題を解決する最良のアイデアは「中国モデル」に従うことだと、他国に公然とアピールしている。
コロナを全体主義で抑えこんだ中国共産党の政治・経済システムは、欧米の民主政治・資本主義経済より優れているとの主張は、西側各国がコロナ禍を制御できず、経済停滞と貧困増大に苦しむ中、説得力を備えつつある。「中国的解決策」がコロナ後の世界を制する可能性が高まってきた。
2016年7月、国際仲裁裁判所が中国の南シナ海の島々の領有の主張を「国際法上の法的根拠がなく、国際法に違反する」との判断を下した後、対外連絡部は、中国の立場は120カ国の240を超える政党と、世界中の280の著名シンクタンクやNGOから、国際世論の多数派の支持を得ていると主張した。
強大な経済力を持つ一党独裁国家の攻勢に、自由な政治・経済秩序を当然視してきた民主主義諸国の弱い同盟は明らかに劣勢となりつつある。中国共産党は、自分たちはもう世界の世論を変えられる十分な力を持っていると信じているのだ。