進む金与正氏への権力委譲|西岡力

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北朝鮮による拉致被害者横田めぐみさんの父、横田滋さんが天に召された。滋さんの戦いを一言で表すなら、世論に訴えてウソを打ち破ることだった――。一方、北朝鮮では、金正恩の妹・与正への権力委譲が進んでいる。日本政府が今すべきことは何か。


北朝鮮による拉致被害者横田めぐみさんの父、横田滋さんが天に召された。被害者救出のため、1997年から共に戦ってきた。戦場の私のすぐ横で敵に向かっていた戦友が敵弾に当たって倒れた、という感覚だ。

北朝鮮のウソと戦った横田滋さん

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滋さんの戦いを一言で表すなら、世論に訴えてウソを打ち破ることだった。平成9年、実名を出すと北朝鮮が被害者に危害を加えるかもしれないという恐れがある中、実名で訴えると決断された。拉致などあるはずがないという北朝鮮のプロパガンダが日本を支配していたが、それを打破して5年後に金正日総書記による拉致謝罪まで勝ち取った。

しかし、北朝鮮は、拉致したのは13人だけで、5人を返して8人は死亡したから拉致問題は解決したという新しいウソをついた。日本国内にも、被害者の死亡を認めて国交正常化へ向かうべきだという勢力が出てきた。

温厚で人前で怒りを表すことのなかった滋さんが、感情をあらわに激怒したことがあった。平成14年9月、政府が未確認のままめぐみさんたち8人を死亡と断定して家族に通告した翌日に、平壌から戻った外務省幹部から「死亡は確認していない」と直接聞いた時と、平成16年、北朝鮮がめぐみさんのものとして提供した遺骨が別人のものと判明した時だ。ウソへの強い怒りが滋さんの戦いの原動力だった。

妹が首領に代わって「指示」

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