米大統領副補佐官が「打倒中共」の号砲|石平

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2020年5月4日、アメリカのマシュー・ポッティンジャー大統領副補佐官(国家安全保障担当)がオンライン・イベントで、英語ではなく中国語で基調演説を行った。それはアメリカ政府高官がホワイトハウスから中国国民向けて演説で直接訴えるという、前代未聞で画期的な事であった。その演説の内容とは──。(初出:『Hanada』2020年7月号)


デモ行進する北京大学の学生

米国と縁の深い二人の中国知識人

ポッティンジャー氏は演説冒頭から、まず自分がホワイトハウスから演説を行っていることを告げ、トランプ大統領からの中国人民への祝福を伝えた。こうすることによって、この演説は単なる個人的な行為ではなく、トランプ政権の意志に基づくものであると示唆した。つまり一個人ではなく、アメリカ政府から中国国民に対する訴えなのだ。

ポッティンジャー氏が演説のなかで真っ先に取り上げたのが、まさにこの「五四運動」の話である。五四運動が提唱した啓蒙主義と民主主義が中国の政治・社会・文化を大きく変えていった、と運動の歴史的意義を高く評価した。

続いて、ポッティンジャー氏は五四運動の精神を受け継ぎ、中国の文化や国民意識を大きく変えた二人の中国知識人のことを取り上げて、その業績を褒め称えた。

一人は、中華民国時代の1917年から北京大学教授、駐米大使、北京大学学長を歴任した大知識人の胡適。

胡適の一番の業績として取り上げたのは、彼が先頭に立って中国の「白話文運動」、すなわち知識人独占の古き漢文に取って代わって口語(白話)を文章の書き方とする運動を推し進めたことである。ポッティンジャー氏からすれば、それこそが中国における言葉の革命であり、文化の平民化・民主化である。

取り上げたもう一人の人物は、1920年代に南開大学教授を務めた張彭春。彼はのちに中華民国の外交官となって、国連安保理の中国代表を務めた。1948年、国連が世界人権宣言を制定・採択した時には、中国代表として宣言の起草委員会の主要メンバーとなった人物だ。

張彭春の業績として讃えたのは、まさにこの世界人権宣言の起草にかかわったことである。ポッティンジャー氏に言わせれば、中国の先人が人間の基本的人権と自由を訴える人権宣言を作った当事者の一人であれば、人権と自由の理念は中国人にとっても普遍的な価値観であるはずであり、いまの中国人もその精神を受け継ぐべきというのである。

胡適

魯迅の言葉で中共批判

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