デートレイプドラッグで昏睡状態に?
山口氏と会った時の伊藤氏の装いは、関係者の証言によれば、ベージュのコート、白いカーディガン、黒いブラウス、キャミソールで、下着は濃紺地、胸元が白い花柄にデコレートされた、胸を寄せてあげるタイプのブラジャーと、同じく濃紺のTバックのヴィクトリアズ・シークレットのパンティだという。
当日どこまで着替えたのかはわからないが、外形はシンプルでスタイリッシュ、下着はかなり派手めというところであろうか。
いずれにせよ、自宅で着替えたあと、伊藤氏は「とよかつ」に到着した。
「とよかつ」は大衆串居酒屋であり、厨房を囲むカウンター20席ほどの店だ。当日の写真では、伊藤氏は朗らかに楽しんでいるように見える。伊藤氏自身はこの店での酒量をワイン1杯と主張しているが、店側は、伊藤氏は生ビール2杯、しそサワー1杯、ワインをグラスで少なくとも数杯飲んでいたと証言している。滞在時間は30分~40分、相当なハイペースだ。
伊藤氏は、仕事の話もビザの話も出なかったと主張しているが、店主は伊藤氏がビザの話をしていたことを記憶している。あまりに執拗な自己PRぶりが強く印象に残ったためだ。山口氏はあまり会話が成立しない伊藤氏を差し置いて、左隣の美容師の相客と話していた。その間に伊藤氏は、自らワインを手酌で飲み干し続けたというのが証言内容だ。
2軒目の「鮨の喜一」も山口氏がその頃存命中だった父君、友人と通う行きつけで、カウンター12席ほどの小さな店だ。伊藤氏は訴状で、「原告(伊藤氏)の記憶では2人で日本酒を2合ほど飲んだだけだったが、原告が2度目のトイレに行った際に、頭がくらくらとし、蓋をした便器にそのまま腰掛け、給水タンクに頭をもたせかけて休んだきり、その後記憶がなくなってしまった」と主張している。
だから自分は山口氏にDRDを盛られ、昏睡状態のところを犯されたのだ、というのが彼女の主張の第1の柱であった。
昏睡状態ではなく、泥酔状態
ところが店主の遠藤氏によれば、山口氏、伊藤氏の酒量は合わせて1升ほど、このうち伊藤氏は自ら冷酒を何度もお代わりして手酌で飲んでいたという。情報を総合すると伊藤氏の酒量は都合6から7合となる。
遠藤氏によれば、伊藤氏は酔ってハイヒールを脱ぎ、裸足で店内を歩き回り、他の客の席に割り込み陽気に話し込んでいた。店の客筋上、こんな大酒・泥酔する女性客は珍しく、印象に強く残ったという。その間、山口氏は偶々隣席にいた同店常連のタレント、さかなクンと話し込んでいた。
伊藤氏がトイレに入ったまま15分ほど出てこないので店員が開けたところ、氏はトイレから崩れ落ち、不自然な格好で寝ていた。ところが店員に介抱されて席に戻った伊藤氏は、再び日本酒を自ら注文して、手酌で飲み始めたのである。
DRDは女性の意識を失わせて性行為を行う目的で作られた、準強姦犯罪のための薬物である。
トイレで寝ていた伊藤氏は席に戻り自ら酒を注文しているのだから、DRDによる昏睡とは違う。記憶をなくしたという彼女の主張は本当かもしれない。だが、それは自ら大量に飲酒した結果に過ぎず、山口氏の意図によるものではない。
どちらの店も明るく狭い。カウンターから客の様子は一目瞭然だ。山口氏がDRDを伊藤氏の飲み物に入れる場合、店主夫妻、従業員、氏の手元が見える相客全てが誰も見ていない瞬間を狙って事をなさねばならない。至難の業だ。
しかも、ドラッグを服用させれば昏睡状態に陥る。全員が、突如、伊藤氏が昏睡状態に陥った証言者となる。
以上、酒をほとんど飲んでいないのに寿司屋のトイレ内で意識を失った、だから山口氏にDRDを盛られたとの伊藤氏の主張は、信憑性が全くないと言わざるを得ない。