【読書亡羊】戦後80年、「戦争観」の更新が必要だ  平野高志『キーウで見たロシア・ウクライナ戦争』(星海社新書)、仕事文脈編集部編『若者の戦争と政治』(タバブックス)

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


加害者にも被害者にもならないために

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ウクライナは2014年のクリミア侵攻の経験から、8年間様々に備えてきた。それでも侵攻を受けることになってしまった。しかし物心両面で備えてきたから3年にもわたる戦争を戦い続けていられる。ウクライナがファイティングポーズをとっているから、各国から支援を受けられる。

では日本はどうなのか。日本には加害の歴史があるから加害者にならないよう、まずは気を付けるのはいいとして、本当に今を「新しい戦前」にしたくないのなら、話はそこで終わってはダメなのである。

自分たちが望んでいなくても始まってしまう戦争。早く終わりにした方がいいのはその通りだが、そんな道理が通らないのが戦争でもある。今置かれている状況は、どうなのか。もちろん加害者にはならない方がいい。だが被害者にならないこと、他に加害者・被害者を出さないことも同様に大事なのである。

この3年、我々は80年前に日本人が経験したものとは始まり方も経緯も違う戦争を目の当たりにした。戦後80年を、「新しい戦前」にしないためには、戦争観の更新が何よりも必要である。

梶原麻衣子 | Hanadaプラス

https://hanada-plus.jp/articles/712/

ライター・編集者。1980年埼玉県生まれ。月刊『WiLL』、月刊『Hanada』編集部を経てフリー。雑誌、ウェブでインタビュー記事などの取材・執筆のほか、書籍の編集・構成などを手掛ける。

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