【読書亡羊】戦後80年、「戦争観」の更新が必要だ  平野高志『キーウで見たロシア・ウクライナ戦争』(星海社新書)、仕事文脈編集部編『若者の戦争と政治』(タバブックス)

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


「命を諦められるか」の問い

俯瞰した目で見ると、ロシアとウクライナの戦争も「プーチンは核を使うのか」「ゼレンスキーはなおも抗戦するのか」「トランプはこの事態を収束させ得るのか」といった為政者の話になる。それは確かにそうなのだが、政治だけが戦争の趨勢を決めるわけではない。ロシアの侵攻直後から、戦うことを選び、戦い続けている個々のウクライナ人がいる。

彼ら・彼女らは、「戦争」そのものを今すぐにでもやめたいに違いない。突如、日常や将来が脅かされたのだから、誰よりも戦争が終わることを望んでいるのがウクライナの人々であるとも思う。

開戦当初から日本ではウクライナに対して「降伏論」までが説かれ、今もなお「ウクライナが交戦するから戦争が続く。ウクライナに支援するから戦争が終わらない」とする声はある。

「しかし」なのだ。本書でも「戦争疲れ」は誰にとっても当然あるとしたうえで、こう述べている。

〈私を含めて、皆が心身ともに疲れ続けながらも活動を継続せざるを得ない状況に置かれているのが「戦争を生きる」ということだと思いますが、では疲れたからといって、国、町、自分の大切な人、自分自身の自由、尊厳、命を諦められるか、というと、当然ながらそう簡単に諦められないでしょう〉

それこそ、今、この時だけでない「中長期的な将来」を考えれば、戦うのをやめてしまうことが、本当に将来に資するとは限らないのだ。降伏論は唯一の現実解のようでいて、実際には机上の空論に過ぎない。

「戦争が身近なものに」とは言うが

本書を含め、戦争の始まりからを目の当たりにし、巻き込まれた当事者であるウクライナの人々の声や様子がほぼリアルタイムで目や耳に入る経験は、筆者の戦争観には大きな変化を及ぼした。これから起きる戦争だけでなく、過去の戦争に対してもだ。

若い世代ならもっとそうなのではないかと、20代の若者50人に意見を聞いたという仕事文脈編集部編『若者の戦争と政治』(タバブックス)を開いてみた。

ウクライナで起きた戦争、パレスチナで起きている破壊について「戦争が身近なものになっている」「加害者になりたくない」という意見を綴っている人が多い。それはそうで、人として言えばロシアの立場になるくらいなら、ウクライナの立場の方がいい。

だが、それはやはりまだ「戦争が日常に組み込まれ、大事な人がこの世から暴力によって消されてしまう」という状況の、何割かしか捉えられていないから言えることであって、ウクライナ人からすればやはり机上の空論に過ぎないだろう。

一番重要なのは「侵攻を受けないこと」であって、考えねばならないのは「そのために何が必要なのか」ではないか。

若者の戦争と政治 20代50人に聞く実感、教育、アクション

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読書亡羊 書評 梶原麻衣子

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