【読書亡羊】それでもツイッターは踊る  津田正太郎『ネットはなぜいつも揉めているのか』(ちくまプリマー新書)

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


それでもなぜSNSをやるのか

「そんなに絶望的な状況で、悪影響しかないならSNSなんてやめてしまえばいいのに」

あまりSNSをやらない人からすればそういう話になるのだろうが、最終章〈単純さと複雑さのせめぎ合い〉で津田氏が書いているように、SNSには利点も、いい話もたくさんある。何より、それまでは何らかのメディアに載らなければ存在すら知りえなかった人々の思いや発想、〈生活の断片〉を垣間見ることができるからだ。

これまで同一線上で目にすることのなかった様々な階層・立場の人たちの意見や生活を目にすることができ、時にはそこに接点が生まれもする魅力的なツールだからこそ、炎上や誹謗中傷など様々なマイナスはあっても多くの人は使い続けるのであろう。

もちろん、金儲けや承認欲求を満たすために人を貶めたり、形成不利と見るや被害者ポジションを取る不届き者もいるが、こういうものとは距離を取り、自分が標的にされたら粛々と法的手段に出るしかない。

津田氏は、対立集団への憎悪が増幅していくような状況を改善するためのアイデアは持ち合わせていない、と率直に書きつつも、わずかな希望に触れて本書を締めくくっている。

梶原麻衣子 | Hanadaプラス

https://hanada-plus.jp/articles/712/

ライター・編集者。1980年埼玉県生まれ。月刊『WiLL』、月刊『Hanada』編集部を経てフリー。雑誌、ウェブでインタビュー記事などの取材・執筆のほか、書籍の編集・構成などを手掛ける。

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