目加田説子氏:冷戦が終結してから今は最大の軍拡時代に入ったなと。軍事費を見ると冷戦時代に舞い戻ったかのようだ。ただし、冷戦時代を検証したいろいろな研究から、軍拡というのは最大の無駄だったということが明らかになってきている。我々はそこを教訓として直視しなければいけない。
他国を侵略しない自由主義社会にとって、軍拡はあくまでも安全保障=セキュリティ対策であり、全体主義社会との間に交戦というハザードが発生しなかったことから、少なくともすべてが無駄であったとは言えません。交通事故を起こさなかったドライバーに、自動車保険に加入していたことは無駄だったというのと同じです。
勿論、過剰なリスク評価に基づく投資は無駄につながりますが、重要な事実は、軍拡戦争によって経済が破綻した専制全体主義国家のソヴィエト連邦が平和裏に崩壊したことです。
このことは、軍拡が無駄なく間接的アプローチの戦略として機能したことを示す証左と言えます。軍事という強制力は、警察の拳銃と同様、使わないことが最善のシナリオなのです。
安全保障のジレンマに陥っている国は……
目加田説子氏:それから「安全保障のジレンマ」という言葉がある。軍拡で安全になると思ったら、相手も軍拡してしまうということで、逆に言うと安全保障が不安定になってしまう。いま世界はそのジレンマに突入していると思うし、日本もこれだけ防衛費が増大していて、最終的に倍増すると言っているわけなので、このジレンマに陥っているのではないか。けっして安全保障環境は改善していない。
冷戦後の軍拡の主役は、2000年代に突入して軍事費を急拡大させた中国と、2014年のウクライナ侵攻以降に軍事費を急拡大させたロシアです。
専制覇権国家である彼らは自国周辺の主権が及んでいない土地を核心的利益と宣言し、侵略を実行してさらなる拡大を虎視眈々と狙っています。とりわけ中国は、日本の領土である尖閣諸島を核心的利益と宣言しています。
既に日本を敵認定している相手に対してセキュリティ対策を強化することは、安全保障のジレンマという「選択の問題」ではなく、「選択の余地のない課題」です。
安全保障のジレンマに陥っている国があるとすれば、それは中国とロシアです。「汚染水」デマもそうでしたが、なぜ目加田氏は、加害者側のならず者国家に与し、被害者側の日本を不合理に批判するのでしょうか。