いつものように番組は、番組の論調に100%合致するシニカルな発言だけを街の声として紹介しました。
そもそも34年前のバブル崩壊時の状況を知る由もない30代の公務員が「またバブルみたいに弾けちゃうんじゃないかな」と経験論で語っているのは、無理やり感満点です(笑)。
おそらく、これらの回答には【黙従バイアス acquiescence bias】という認知バイアスが作用していることが考えられます。一般に、アンケートの被験者は、質問に含まれた暗示を肯定的にとらえて回答する傾向があります。
例えば、街角でインタヴューを受ける人は、テレビのレポーターの質問から「求めている回答内容」を察知し、その論調に合った回答をしてしまうのです。多くの場合、編集映像の街角インタヴューは、番組がどのような意見を結論とするかの伏線と言えます。今回もそうでした。
「歪んだ株高」
アナウンサー:日本銀行の植田総裁は…
日本銀行・植田和男総裁:日本経済はデフレではなくインフレの状態にある。雇用賃金が増加する中で物価も緩やかに上昇する好循環が強まっていくと考えています。
アナウンサー:デフレからの脱却を目指してきた中で、それが実現し、今後賃金も上昇していくと自信を見せました。ところが…
会社員(20代):まだちょっと信じられない。数値だけじゃなくて、実生活でも体感できるようなことがあれば嬉しい。
公務員(30代):30ちょっと生きてますけど、すごく景気が良かったことがないので、景気が良くなると言われても
アナウンサー:歴史的な株高の中で、生活が潤う実感は拡がっていません。
さすがは『サンデーモーニング』、しっかりと植田総裁の前向きな声を、街の後ろ向きな声を使って否定しています。まるで、日本の景気が良くなって人々の生活が潤うことに警戒感を持っているかのようです(笑)。
ちなみにサンモニの番組視聴者は、岸田首相や植田総裁のような権力者の意見よりも、番組が紹介するような庶民の声を信じます。なぜなら、番組視聴者は、【格言に訴える論証 appeal to aphorism】によって紹介される「権力者は必ず腐敗する」という格言を常日頃擦り込まれているのと、【彼がそう言っている論証 ipse dixit / he, himself, said it】によって紹介される「口コミ」を信じるよう教育されているからです。
さて、この話題にコメントを発したのは、我らが寺島実郎氏です。
寺島実郎氏:整理しておくと、「歪んだ株高」だということをしっかり見抜かなければいけない。