相変わらず、意味深な【換喩 metonymy】を口にする寺島氏ですが、「歪んだ株高」という表現はその通りだと思います。
日本経済のマクロ指標は低調であり、実体経済と金融経済は乖離しています。円が弱すぎて輸出企業の株がお手頃なのと、中国からの資金の移動によって「歪んだ株高」が発生しているのが現状です。日銀が金融緩和をやめるタイミングで、歪が一気に解消されて負の影響が発生する可能性はあると思います。
投資は金持ちだけの専売特許ではないのに……
寺島実郎氏:何よりも重要なのは、「経済」という言葉は「経世済民」という言葉から始まったので、民が潤っているのかということが一番経済にとって大事だ。ところが、実質賃金は落ちている。もっと言うならば、「株高」と言うが、個人株主の持っている株の3分の2は高齢者が持っている。若い人なんか、株が上がったからって何のプラスにもならない。我々は実体経済と金融経済が乖離を起こしているなかに、現象としての株高が起こっているんだと。大事なのは、本質的な意味で日本の産業力とか技術力とか生産性を高めていく議論に戻さなければいけない。マネーゲームの話で興奮していてはいけない。
本当に残念なのは、マスメディアがバブル崩壊以来、「投資」という資本主義経済を成長させる重要かつ正当な行為を「マネーゲーム」という名で悪魔化してきたことと、賃金所得だけが真っ当な収入であるかのように、マスメディアが日本国民を洗脳してきたことです。
「株を持っているのは一部の悪徳な金持ちだけ」という歪んだ倫理観を視聴者に擦り込み続けた『サンデーモーニング』はその総本山と言えます。投資は、けっして金持ちだけの専売特許ではありません。
結局、その洗脳の結果、バブル崩壊から一気に株価が上昇を続けたアベノミクスという低リスクの官製相場期に個人投資はほとんど進まず、日本国民はみすみす利益を外国人に持っていかれました。本来利益を享受するに相応しい日本国民が、その利益を十分に享受できなかったことは残念というより他にありません。