「不適切発言」があれば辞職すると公言しているが……
2019年12月20日付静岡新聞の『「文化力の拠点」巡り 自民念頭に知事「ごろつき」批判』という小さな記事が騒ぎの発端だった。
記事は、来年度予算要望で懇談した公明党県議団、共産党県議に対して、JR東静岡駅南口に計画した「文化力の拠点」整備に、自民党県議団が反対していることを不満に持った川勝知事が「やくざ、ごろつきの集団」と強い言葉で批判、さらに「県議会はなぜ足を引っ張るのか。反対する人は県議の資格はない」などと述べたことを伝えた。
当初、川勝知事は会見で「撤回する必要はない」「そんなことを言った覚えはない」など否定していた。
静岡新聞記者が「議会の要請があれば、音声記録を提供する」と述べると、前言を翻して、川勝知事は「図書館建設に反対する人はいない。県民みなが欲しいと言っているものに反対するのは公益に反する」などとして、「やくざ、ごろつき」「県議の資格はない」発言を認めた。
最終的に、「文化力の拠点」事業は、県立中央図書館建設のみを残して白紙撤回して決着した。その際、「不適切な発言があったことを認め、すべて撤回します」と川勝知事は、自民党県議団へ謝罪した。
当時は、川勝知事が不適切発言を認めても、辞職を求めることもなかった。
2014年の「文化力の拠点」計画の立ち上げのときから、川勝知事は「静岡県に必要な価値の体系」などと訳のわからない説明をした。つまり、具体的にどのような施設を建設したいのか全く不明で、理念だけが先行した。
東アジア文化都市の発展的継承センターもあまりに唐突であり、川勝知事の無責任な思いつきを口走ったのだろう。
今回の場合、10月6日の県議会総務委員会は知事の給与減額条例案に伴い5項目の「附帯決議」を全会一致で採択した。9月県議会本会議でも最終日に全会一致で同決議が採択された。
最も重要な1項目は、『今後、仮に不適切な発言があった場合には辞職するとの発言に責任を持つこと』であるが、当然、法的拘束力はない。
川勝知事が「不適切発言」があれば辞職すると公言しているが、実際に辞職するかどうかは、川勝知事の判断に任される。
県議会は川勝知事の「不適切発言」を追及することで、再び、辞職を求めることになるのかどうか。ふつうに考えれば、自民党県議団は知事候補を決めていなければ、そんなことをしてもムダである。
「だらしない」自民党県議団
川勝知事の「不穏当発言」を追及した自民党県議(静岡県議会本会議場、筆者撮影)
県議会総務委員会の集中審議が行われた11月22日の翌日23日に、2025年6月の県知事選候補者を検討する自民党県議団の会議が非公開で開かれた。
会議後、県議によると、現在、候補者は未定だという。ただ実際のところは、わからない。
川勝知事が5期目の出馬を決断すれば、前回選で、前国交副大臣の自民党推薦候補に圧勝したときと変わりなく、いまのところ楽勝が予想される。相手がわからないのだから、当然である。
3年ほど前、「なぜ、川勝知事は選挙に強いのか」との質問に、静岡新聞記者が「自民党がだらしないから」と同紙のコラム記事に書いていた通りの結果がいまでも続いている。
前回選を考えれば、いまごろになっても、自民党県議団が候補者を決めていないというのはあまりにもだらしない。
「やくざ、ごろつき」「県会議員の資格はない」とくそみそにけなされた自民党県議団だが、その後1年半もあった2021年6月の県知事選で候補擁立に手間取り、結局、川勝知事の自民党公認候補に約33万票の大差をつける圧勝を許した。自民党県議団はこの屈辱を忘れてはいないはずだ。
12月県議会で川勝知事と本当に対峙するのであれば、自民党県議団は知事候補者の検討を終えていなければならない。知事候補者が白紙の状態で戦うことなどありえないからだ。
「だらしない」と揶揄される自民党県議団。今回も同じ轍を踏むのだろうか?