【リニア妨害】川勝知事の「現実離れ」した嫌がらせ|小林一哉

【リニア妨害】川勝知事の「現実離れ」した嫌がらせ|小林一哉

産経新聞が報じた、非公式の場で、川勝知事がJR東海に品川―名古屋間の先行開業を取り下げるよう、繰り返し要請してきたというスクープ。しかし、川勝知事は産経の報道を否定した。はたしてその真相は――。


事実なら期成同盟会から脱会か

当時、川勝知事はさまざまな会見で「松本空港ルート」を提言したり、品川―大阪までの全線一括開通を述べていた。県内各地で行われる知事と住民の集いなどで「松本空港ルート」を取り上げたが、一般の県民には知事が何を言っているのかわからなかっただろう。
当時の状況を承知していれば、産経新聞ウエブ記事の内容そのものは全く目新しいものではない。
 
産経新聞ウエブ記事の大きなポイントは、いまさら、そんな発言をするのか、というタイミングの問題である。

ふつうに考えれば、この期に及んで、「全線開通」と「松本ルート」を川勝知事が話題にすることに違和感を抱かざるを得なかった。あまりにも軽率であり、自ら墓穴を掘るに等しい行為だからだ。

と言うのも、昨年7月にリニア建設促進期成同盟会に加入する条件として、川勝知事は、
1、現行ルートでの整備を前提にする。
2、東京、名古屋間の2027年開業を目指す立場を共有することを遵守するとした。そう約束して、リニア建設促進期成同盟会に入れてもらったのだ。

それなのに、昨年12月、国などの関係者に面会して、まさに1、2を否定する2つの“提案”をするなどちょっと考えられなかった。
 
これまでも川勝知事は真っ赤な嘘やごまかしをするのだが、それでもちゃんと計算している。そのくらいにしたたかではある。
 
6月13日の会見で、「ルート変更の見解」を問われると、川勝知事は「ルート(品川―名古屋)を前提にして、県専門部会、国有識者会議で議論していただいたわけです。中身は水と発生土で、これの決着がついていません」などと訳の分からない回答に終始した。それだけ慌てたのかもしれない。その慌てぶりを見れば、産経新聞ウエブ記事が正しいのかもしれない。
 
川勝知事から提案を受けた産経新聞ウエブ記事に登場する関係者は「実情を見れば、あまりに現実離れしている」などとコメントしている。

昨年、神奈川県駅の土地買収などの進捗遅れで2027年開業に間に合わないなどと視察の際にクレームをつけ、また昨年12月以来、「山梨県内の調査ボーリングをやめろ」といずれもリニア建設妨害の「現実離れ」したいやがらせを続けている。
 
今回の2つの提案も、「現実離れ」している。国の関係者との話の中で、本当に話題にすることはありうる。ただし、単なるいやがらせレベルでしかない内容である。

川勝知事が昨年12月、この2つの発言をしたのかどうか、いまのところ不明である。産経新聞ウエブ記事に登場する「関係者」がちゃんと発言すれば、この問題は蒸し返されるはずだ。
 
と言うのも、知事会見に参加した記者たちの多くが、6月2日産経新聞ウエブ記事が正しいと考えているからだ。もし、事実だと証明できれば、川勝知事はリニア建設促進期成同盟会から、約束違反を問われ、退会に追い込まれる可能性もある。少なくとも、川勝知事の信頼性はますます失われる。
 
ただ、このまま「藪の中」では、真相は明らかにされないままで終わる。

小林一哉(こばやし・かずや)

https://hanada-plus.jp/articles/886

「静岡経済新聞」編集長。1954年静岡県生まれ。1978年早稲田大学政治経済学部卒業後、静岡新聞社入社。政治部、文化部記者などを経て、2008年退社。現在、久能山東照宮博物館副館長、雑誌『静岡人』編集長。著作に『静岡県で大往生しよう』(静岡新聞社)、『家康、真骨頂、狸おやじのすすめ』(平凡社)などがある。

関連する投稿


【川勝劇場終幕】川勝平太とは何者だったのか|小林一哉

【川勝劇場終幕】川勝平太とは何者だったのか|小林一哉

川勝知事が辞任し、突如、終幕を迎えた川勝劇場。 知事の功績ゼロの川勝氏が、静岡に残した「負の遺産」――。


川勝知事の辞意表明…リニアの命運を決める戦いが始まる|小林一哉

川勝知事の辞意表明…リニアの命運を決める戦いが始まる|小林一哉

急転直下、辞意を表明した川勝知事。しかし、本当の戦いはここからだ――。


マスコミが報じない川勝知事が暴言失言を恐れない理由|小林一哉

マスコミが報じない川勝知事が暴言失言を恐れない理由|小林一哉

「磐田は浜松より文化が高かった」 また暴言をした川勝知事。しかし、撤回もせず、悪びれる様子もない。なぜ、川勝知事は強気でいられるのか――。


川勝知事の「真っ赤な嘘」ゴールポストを動かした決定的証拠|小林一哉

川勝知事の「真っ赤な嘘」ゴールポストを動かした決定的証拠|小林一哉

山梨県選出の中谷真一議員が静岡県がゴールポストを動かしていると批判すると、川勝知事はすぐにさま「ゴールポストを動かしたことは一度もない」と反論。 しかし、静岡県の資料を見てみると……。


川勝知事、リニア妨害シナリオ|小林一哉

川勝知事、リニア妨害シナリオ|小林一哉

静岡県のリニア問題責任者を務める副知事による記者会見は、デタラメだらけだった。この記者会見の本当の目的とは――。


最新の投稿


【読書亡羊】「台湾系移住民」が経験した古くて新しい問題  三尾裕子『心の中の台湾を手作りする』(慶応義塾大学三田哲学会叢書)|梶原麻衣子

【読書亡羊】「台湾系移住民」が経験した古くて新しい問題 三尾裕子『心の中の台湾を手作りする』(慶応義塾大学三田哲学会叢書)|梶原麻衣子

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


週刊誌不倫報道への違和感|なべやかん

週刊誌不倫報道への違和感|なべやかん

大人気連載「なべやかん遺産」がシン・シリーズ突入! 芸能界屈指のコレクターであり、都市伝説、オカルト、スピリチュアルな話題が大好きな芸人・なべやかんが蒐集した選りすぐりの「怪」な話を紹介!


【今週のサンモニ】自民党につきつけられた政策転換or現状維持|藤原かずえ

【今週のサンモニ】自民党につきつけられた政策転換or現状維持|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


【今週のサンモニ】コメの生産性向上と輸入自由化を目指せ|藤原かずえ

【今週のサンモニ】コメの生産性向上と輸入自由化を目指せ|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


日本国は宗教に冷淡|上野景文(文明論考家)

日本国は宗教に冷淡|上野景文(文明論考家)

統一教会への解散命令で、政教分離のあり方に注目が集まっている。 日本の政教分離は、世界から見てどうなのか――。