大阪自民、大惨敗! 誰も言わない「敗戦」の内幕|長尾たかし

大阪自民、大惨敗! 誰も言わない「敗戦」の内幕|長尾たかし

大阪自民はなぜ大惨敗したのか。取ってはならぬ手法に手を染め、保守の魂を捨て、勝利の女神だけでなく、古くから自民党を支持する保守層から見放され、自民票は完全に維新に流れた――。(サムネイルは谷口真由美氏Twitterより)


日本維新の会はなぜ選挙に強いのか

最後の理由は、大阪自民のなかには、日常活動や選挙活動をやっているとは言えない支部組織があると指摘せざるを得ません。自民党という伝統ある大看板にあぐらをかいて来ただけで、これまではなんとか乗り越えていたものの、今回ばかりは惨敗したのです。

一部の議員の行動がSNSなどで批判的に指摘されていることが象徴的です。候補者陣営の事務所に為書(ためがき)などを携えて行き、候補者と握手の写真を撮りSNSにアップする。 街宣車に乗ってマイクを握る、手を振る。 「これで選挙だと思っているのか?」という現場サイドからの厳しい視線に気づいていないのです。

選挙とは突入する前が一番のピークです。告示前の投票依頼は、公職選挙法で禁止されていますが、ポスターを貼らせてください、支援者を紹介してください、選挙ハガキを書いてくださいなど、自身の後援会、支援者の自宅を一件一件回って、お手伝いを募るのです。

自民党員の皆さんには、チラシ配りや公営掲示板ポスター貼りのお願い、選挙が始まったらボランティアにきてもらうよう、議員本人が候補者に成り代わりお願いして回り、ようやく選挙戦に突入し、投票依頼行動につながる。 ココが選挙で最も重要なエッセンスなのです。 つまり結果は選挙に突入する前にすでに出ているのです。

維新陣営はこれをきっちりと実行しております。 だから選挙に強い。この差が圧倒的勝利という選挙結果に現れるのです。 私が協力依頼を訪問する先々でも、ほぼもれなく維新の候補者陣営がなにがしかの足跡を、すでに残していることに私は愕然としました。こちらがしっかりと動いていれば、あちら側の動きも妙にわかる、これが政治活動です。

さらに特筆すべきは、統一地方選挙ではない中間選挙において維新は確実に勝利を勝ち取ります。全国から、選挙のない各級議員やその支援者が選対に入り、人で溢れかえるほどの選挙事務所の運営、選挙中の辻立ち等を行い、交差点という交差点を維新のイメージカラーである黄緑色一色に染めてしまうのです。

残念ながら自民党にはそれほどの徹底力がありません。国会議員が朝8時から20時まで幟を持ち突っ立っているなどは国会議員のやることじゃない(確かにそうかもしれませんが)、演説会があれば早目にマイクを握らせろ、そしてすぐ中座する、この繰り返し。

しかし、維新の国会議員はどんな指示でも選対の意向を積極的に受け入れ、当選のためにあらゆる我慢をしながら実行するのです。

そして気がつけば、大阪府下の維新議員は250名、自民党150名という大差となり、一昨年の衆議院選挙、そして今回の統一地方選挙に突入したのです。

歴史的惨敗を喫したあの衆議院選挙を上回る、史上空前の壊滅的大惨敗に大阪自民が何を学ぶか。
つまり、戦う前に負けていたのです。

単なる高市バッシングか、奈良知事選の背景

Getty logo

2021年衆院選

奈良県知事選挙もその写し絵のような状況で突入しました。

自民党奈良県連としては、圧倒的多数で平木しょう候補の推薦を決定した一方で、自民党本部はこれを追認しなかった。一方、東京から言われて出馬をしたと告白する荒井正吾候補の出馬により、自民党票が分裂し、維新の山下真候補が漁夫の利を得て当選しました。

地上波では、高市早苗奈良県連会長の責任を問う声が大きく、ネット上では党本部の決定に責任を問う声が大きく、ここでも対立しております。

責任論を申し上げれば、私は荒井候補に置かれては、どんなことを言われようが、どんな説得を受けようが、立候補すべきではなかったと申し上げたい。平木候補が訴えていたように、荒井知事が蒔いた種は平木候補が芽吹かせ、実としたでしょう。

しかし、維新候補は継続しないと発信していました。自身の政治家としての花道を飾るならば不出馬とすべきだったと思います。晩節を汚してまで優先する何かがあったのでしょう。

大阪府知事選挙は前述した通りの状況でしたので、私は一切関わりませんでした。その時間を奈良県知事選挙に当てたのです。国会質疑に体を縛られ、なかなか地元入りできない高市大臣から直電を受けながら、街頭演説、立会演説会などでマイクを握らせていただきました。それだけではなく、私を支援してくださっている奈良県民の方々ともいろいろな意見交換をさせていただきました。

私の本拠地である中南河内は奈良県との県境にあり、文化圏、商業圏、経済圏をほぼ共有する地域です。八尾市の経営者、企業や市役所に勤めている方々のかなりの割合が奈良から通勤されておられます。私の支援者(投票権はない)も数多く、後援会長も経営する会社は八尾市内ですが、住まいは高市大臣の選挙区です。

「平木候補ではなく、荒井候補に投票してくれと言われた」

このフレーズを何度聞いたことでしょう。当然、皆さん自民党支持者です。私の支援者ですから、圧倒的に高市大臣を支援する方々ばかりです。高市大臣に直接聞けないので私に問い合わせが来るのです。世論調査等では、自民党票を食い合っておりました。選挙区によってはきれいに半々のところもあったのです。

この状況を作ったのは党本部だという怒りの声も多かった一方で、荒井候補に対する不信感も多かった。しかし、多いわりに荒井候補に傾く声も少なくなかったのです。

あるべき結論を超えた何かがある。世間で言われるような、単なる高市バッシングだけではなさそうだというのが私の実感です。

関連する投稿


衆院3補選「3つ勝たれて、3つ失った」自民党の行く末|和田政宗

衆院3補選「3つ勝たれて、3つ失った」自民党の行く末|和田政宗

4月28日に投開票された衆院3補選は、いずれも立憲民主党公認候補が勝利した。自民党は2選挙区で候補者擁立を見送り、立憲との一騎打ちとなった島根1区でも敗れた。今回はこの3補選を分析し、自民党はどのように体勢を立て直すべきかを考えたい。(サムネイルは錦織功政氏Xより)


「子供1人生んだら1000万円」は、とても安い投資だ!|和田政宗

「子供1人生んだら1000万円」は、とても安い投資だ!|和田政宗

チマチマした少子化対策では、我が国の人口は将来半減する。1子あたり1000万円給付といった思い切った多子化政策を実現し、最低でも8000万人台の人口規模を維持せよ!(サムネイルは首相官邸HPより)


改正入管法で、不法滞在者を大幅に減らす!|和田政宗

改正入管法で、不法滞在者を大幅に減らす!|和田政宗

参院法務委員会筆頭理事として、改正入管法の早期施行を法務省に働きかけてきた。しかしながら、改正入管法成立前から私に対する事実無根の攻撃が始まった――。


硫黄島をはじめ多くのご英霊の力で、今の日本がある|和田政宗

硫黄島をはじめ多くのご英霊の力で、今の日本がある|和田政宗

先の大戦有数の大激戦である硫黄島の戦いで、日米両軍合わせて2万9千人が亡くなった。今回の訪問で、硫黄島で戦った方々がどのような状況で、どのような思いで戦ったのかを、まざまざと知ることができた。


「もしトラ」ではなく「トランプ大統領復帰」に備えよ!|和田政宗

「もしトラ」ではなく「トランプ大統領復帰」に備えよ!|和田政宗

トランプ前大統領の〝盟友〟、安倍晋三元総理大臣はもういない。「トランプ大統領復帰」で日本は、東アジアは、ウクライナは、中東は、どうなるのか?


最新の投稿


薄っぺらい記事|なべやかん遺産

薄っぺらい記事|なべやかん遺産

芸人にして、日本屈指のコレクターでもある、なべやかん。 そのマニアックなコレクションを紹介する月刊『Hanada』の好評連載「なべやかん遺産」がますますパワーアップして「Hanadaプラス」にお引越し! 今回は「薄っぺらい記事」!


【今週のサンモニ】「報道の自由度」ランキングを使ってミスリード|藤原かずえ

【今週のサンモニ】「報道の自由度」ランキングを使ってミスリード|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


【読書亡羊】あなたは本当に「ジャーナリスト」を名乗れますか?  ビル・コバッチ、トム・ローゼンスティール著、澤康臣訳『ジャーナリストの条件』(新潮社)

【読書亡羊】あなたは本当に「ジャーナリスト」を名乗れますか? ビル・コバッチ、トム・ローゼンスティール著、澤康臣訳『ジャーナリストの条件』(新潮社)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


衆院3補選「3つ勝たれて、3つ失った」自民党の行く末|和田政宗

衆院3補選「3つ勝たれて、3つ失った」自民党の行く末|和田政宗

4月28日に投開票された衆院3補選は、いずれも立憲民主党公認候補が勝利した。自民党は2選挙区で候補者擁立を見送り、立憲との一騎打ちとなった島根1区でも敗れた。今回はこの3補選を分析し、自民党はどのように体勢を立て直すべきかを考えたい。(サムネイルは錦織功政氏Xより)


【今週のサンモニ】社会を説教するが具体策は何もなし|藤原かずえ

【今週のサンモニ】社会を説教するが具体策は何もなし|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。