【橋下徹研究①】橋下徹と中国資本との長い歴史|山口敬之【永田町インサイド WEB第1回】

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「いまウクライナは18歳から60歳まで男性を国外退避させないっていうのは、これは違うと思いますよ」「どんどん国外退避させたらいいんですよ。だって西側諸国は武器しか供与しないんですから」。ウクライナへの暴言を繰り返す橋下徹氏。彼の真の狙いはいったいどこにあるのか。


「外交素人」に外交は語れない

これまで私個人としては、政治家ではない橋下氏の発言についてはあまり興味はなかった。しかしウクライナ情勢を巡る橋下氏の発言についてネット番組などでコメントを求められることが少なくないので、関連発言を全てチェックしてみたところ、いくつかの発見があった。

まず、橋下氏は国際情勢の基本知識が欠如していることがわかった。

例えばウクライナのNATO加盟問題について繰り返し発信しているが、NATOがどのような手順を踏んで意思決定するかや、紛争が進行中の国はNATOに加盟できないことなど、基本的な知識のないままに書いていると思われるツイートが少なくなかった。

しかし、国会議員になったことがない橋下氏は、職業として外交を担当したことがないのだから、知識が正確でないことは驚くには当たらない。

そんなことを言ったら、いまテレビ番組でウクライナ問題を語っている「コメンテーター」の多くが、外交経験も外交取材の経験もないタレントやお笑い芸人なのであって、橋下氏もそうした「外交素人」の1人なのだから、コメントが正確であるはずもない。

責められるべきは、人間の命がかかっている戦争を扱う番組で、「外交素人」に外交を語らせているテレビ局である。

「炎上商法」の本当の狙い

しかし、いま祖国が戦禍に見舞われている最中のウクライナ人に「降伏すべき」と言ったら、ウクライナ人のみならず日本人の視聴者からも強烈な反発を買うことくらいは、橋下氏は予測できたはずだ。

政治家時代の橋下氏と仕事をしたり会食したりした経験のある人たちに聞くと、ほとんど例外なく「礼儀正しく低姿勢な好人物」「頭の悪い人物ではない」という答えが返ってくる。

その一方でカメラの前で意見が異なる人物を血祭りにあげ、時には維新の所属議員ですら罵倒する際の橋下氏は、自身の制御の効かない凶暴な人物のようにも見える。

しかし橋下氏をよく知る関係者を取材すると、炎上発言をする時も橋下氏は、
・「有権者の注目を集める」という第一目標と、
・「自分の利益になる展開」という第二目標を明確に設定し、
・落とし所を意識して発言を変えていく
という戦略を持っているという。

そして「今回のウクライナ発言も炎上させるという第一目標は見事に達成した。それならば炎上という手段によって本当の目的である第二目標も達成している可能性が高い」と解説する関係者が少なくなかった。

要するに、橋下氏の過激発言は計算されたものであって、TPOに応じて自分を演じ分けているクレバーなタイプの人間だと見るべきなのかもしれない。

しかし、一連のウクライナ情勢をめぐる発言は、一見するとクレバーには見えない。

家族や友人が祖国防衛のために戦い、国民の1割に当たる400万人が国外に逃れているという悲惨な戦禍の犠牲者であるウクライナ人を目の前にして、聞きかじりの情報を元に上から目線で説教する行為自体、言論人として明らかに愚かといえよう。

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