立憲民主党の森ゆうこ副代表が国会で吠えた
10月13日、参議院本会議の代表質問で、立憲民主党の森ゆうこ副代表はこう吠えた。
「同僚の小西・杉尾両参院議員が行った発信者情報開示請求手続きにより、重要な問題が明らかになってきました。国会質疑の動画を編集して、本来の意図とはまったく違う内容のフェイクニュースを作り上げ、拡散し、野党を攻撃してきたツイッターアカウントの運営者が法人であることがわかりました。
しかも、バズフィードニュースの調査によれば、その法人は自民党の議員や自民党の支部との取引があることもわかりました。
ソーリ、今回の選挙ではお金を使ってネット工作を行い、選挙の結果を不当に歪めるような卑劣な行為を自民党の議員に行わせないと、この場でお約束いただけませんか」
なんのことかさっぱりわからないという読者のために、この騒動の経緯を時系列でふり返ってみよう。
10月6日、立憲民主党の小西洋之、杉尾秀哉の両参院議員が匿名アカウントのツイートで名誉を傷つけられたとして、計880万円の損害賠償と投稿一本の削除などを求める訴訟を東京地裁に起こした。
10月8日、「フライデーデジタル」が《ツイッターで野党攻撃の匿名アカ…正体は「法人」だった》と初めて報道。同月13日、東京新聞が《野党攻撃のツイッターアカウント 正体は企業 取引先自民》と特報面で大々的に報道した。
記事のなかで小西氏は、提訴に踏み切った理由をこう語っている。
「私の国会質疑の趣旨をまったく別のものに仕立て上げて改変し、やりとりの断片を切り取ってツイッターに投稿していた。そんなことが何度か繰り返され、信用や人格を傷つけられた」
10月14日には朝日新聞が《匿名投稿、2議員が提訴 「Dappi」アカウントから「名誉毀損」》、10月24日にはスクープと題して、しんぶん赤旗が「日曜版」で《ウソ攻撃で野党攻撃のツイート 「Dappi」運営企業の社長 自民党本部事務総長の親戚名乗る》と報道した。
問題の核心は、自民党による関与があったかどうかだ。
11月13日、毎日新聞(デジタル)は「投稿に自民党の関与があったことを示す証拠は現段階では見つかっていない」と報じている。
ツイッターのアカウントはほとんどが「匿名」
小西、杉尾両氏が問題視したツイートは「Dappi」というアカウントで、フォロワー数は11月15日時点で17万7千人。小西議員らの提訴といういわば“言論封殺”が原因かどうかはわからないが、10月1日を最後にツイートを停止している。
「匿名アカウント」との報道をみれば、いかにも“胡散臭い”と思われる読者もいるだろうが、世の中のツイッターのアカウントは、ほとんどが「匿名」だ。
もちろん、有名人やツイッターを広告媒体としてとらえる企業は名前を明示しているが、日本で4千万以上あるとされるアカウントのほんの一部である。そもそもツイッターは「匿名」で投稿できることが特徴であり、「匿名」であること自体は何も問題はない。むしろ、「匿名」であるからこそ、表現の自由を行使することができるという側面もある。
「Dappi」のプロフィールをみると、
「日本が大好きです。偏向報道をするマスコミは嫌いです。国会中継を見てます。」と書いている。
「ただの『ネトウヨ』にはあらず」と報じたメディアもあるが、「ネトウヨ」かどうかはどうでもいい。焦点は、この「Dappi」というアカウントによるツイートが、二議員の名誉を毀損するようなものだったのかどうかということだ。
本題に入る前に、まずは「Dappi」がどのようなツイートをしていたのかを紹介しよう。
9月29日のツイートでは、自民党の岸田文雄新総裁の記者会見を取り上げ、朝日新聞記者の「コロナ禍での新総裁の1回目の会見を30分で終わらせるのは少ないのでは?」との質問に対し、岸田氏が「出来るだけ多くの質問を受けたいが、時間制限なしは政治日程(的)に難しい。皆さんに協力いただき、やりとりを出来るだけコンパクトにし効率的に行わせてほしい」と回答したことを引用し、《記者にビシッと釘をさす岸田さんが心強い》とコメントしている。
9月8日のツイートは、朝日新聞が「金学順が慰安婦と名乗り出てから30年。安倍前総理は被害者への手紙を拒否したり日本側に誠意を疑わせる言動があった!当時の経緯は資料・証言に基づき継承すべき!救済最優先!」といった趣旨の社説を掲載していることに対し、《慰安婦問題は“朝日の捏造報道”が元凶なのに、そこには触れず日本批判の朝日新聞は屑》といった批判コメントを付している。