現在、東京都武蔵野市で外国人にも住民投票権を認めた住民投票条例が制定されようとしている。これは住民投票に名を借りた外国人参政権条例であり、憲法違反と思われる。
参政権は「国民固有の権利」
武蔵野市では、立憲民主党や共産党などの支持を得て再選された松下玲子市長の主導のもと、市民不在の中で作成された住民投票条例案が議会に提出されており、12月21日の本会議で採決される予定だ。
令和2年施行の武蔵野市自治基本条例によれば、市長は市政に関する重要事項につき、市内に住所を有する18歳以上の者のうち一定数以上から請求があったときは、住民投票を実施しなければならない。そして、市は住民投票の結果を尊重するものとする、とされている(第19条)。
今回の住民投票条例案は、自治基本条例にいう「18歳以上の者」の中に定住外国人が含まれ、永住者や留学生、技能実習生らも投票権を行使できることを明らかにするものだ(第5条)。この住民投票権は名を変えた外国人参政権であり、衆議院法制局も、内容次第で地方参政権に匹敵するものとなり得るとしている(産経新聞12月3日)。それ故、本条例案は憲法違反の疑いが強く、しかも極めて危険である。
憲法は、参政権を「国民固有の権利」としており(第15条1項)、たとえ地方参政権でも外国人には認められない(拙著『外国人の参政権問題Q&A-地方参政権付与も憲法違反』)。参政権は国家の存立を前提とし、国民つまり国家の構成員にのみ保障された権利だからだ。従って、参政権の一つである住民投票権は国民にしか与えられず、本条例は憲法違反といわなければならない。
「国家に対する忠誠義務」と切り離せない「国籍」
外国人投票権を支持する人々は、「国家に対する忠誠義務」と切り離せない「国籍」の重みを理解していないのではないか。
地方自治体の事務には、非権力的なサービス事務だけでなく、公権力の行使を伴う警察事務や国政に直接影響を及ぼすものも含まれている。
例えば、自衛隊や米軍の基地、あるいは原子力発電所を抱える自治体においては、外国人を含む住民投票の結果が当の自治体だけでなく、国政に与える影響も無視できないであろう。武蔵野市でも将来どのような問題が生起するか分からない。そのような場合に、わが国の運命に責任を負わないばかりか、本国に忠誠を誓っている外国人住民に参政権の一つである住民投票権を与えても良いのか。
確かに、住民投票の結果に法的拘束力はないが、市には尊重義務がある。それ故、わが国の国益を害し、場合によっては重大な危険をもたらしかねない住民投票条例案を、武蔵野市長は速やかに撤回すべきだ。( 2021.12.06国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)