日本は「戦後の霧」を払え|ジェイソンモーガン

日本は「戦後の霧」を払え|ジェイソンモーガン

日本は、降伏文書に他ならない戦後憲法をこれまでなぜ改正できなかったのだろうか。現憲法は銃剣で強制された押し付け憲法である。憲法のわずかな改正でも、それを試みることは「戦後の霧」から逃れることに等しい。


戦場での超現実的な経験を説明するのに、「戦争の霧」という言葉が復員軍人によってしばしば使われる。戦闘を体験した人は、周囲の状況からの断絶感、方向感覚の消失、周りの出来事や時間の経過についての認識の喪失について語る。

戦勝国の米国にとって、第2次世界大戦の「戦争の霧」はずっと前に晴れた。一方、敗戦国の日本は長く「戦後の霧」に包まれてきた。「平和ボケ」という霧である。平和の理想を信じていれば全てうまくいくというこの考え方は日本人の心理に深く食い込み、広島、長崎、東京、大阪、福岡など多くの都市で民間人を焼き殺した戦争犯罪人の集団に自国の防衛を委ねた。

国民を目覚めさせる憲法改正

日本は比類なき邪悪な国であり、その暗い運命に自ら責任があるという考えは、まさに「戦後の霧」である。日米同盟は「価値観に基づく同盟」で「希望の同盟」だというフィクションも「戦後の霧」である。無防備の都市に2発の原爆を落としただけでなく、米国によって殺された人に祈りをささげるため靖国神社を訪れる日本人をさげすむ国と、日本はどんな価値観を共有するのだろうか。

日本は、降伏文書に他ならない戦後憲法をこれまでなぜ改正できなかったのだろうか。憲法がただの紙切れではなく、日本の「国体」を改ざんした記録文書だからだ。戦後憲法の意味は文言より奥深いところにあるので、断片的に変更することはできないのである。現憲法は銃剣で強制された押し付け憲法である。憲法のわずかな改正でも、それを試みることは「戦後の霧」から逃れることに等しい。

米占領軍の洗脳工作の魔術にかかった日本人が敗戦の惰眠をいまだにむさぼる中で、憲法改正は日本人を目覚めさせる。それは、無差別攻撃により平均的な日本の女性、子供、年寄りを恐怖に陥れた大国への従属という悪夢からの目覚めである。米国政府の人種差別主義と独善、日本の非アングロサクソン的歴史遺産と誇り高い宗教・文化的伝統への軽蔑こそ、現憲法の本質である。これも、紙とインクで具象化された「戦後の霧」だ。

出でよ、国益を知る指導者

日本の歴史の多くは米国により抹消された。しかし、歴史は回復できる。そして、歴史の真実を回復しようと努力する少数の勇気ある日本人研究者の英雄的な取り組みのおかげで、歴史は既に回復されつつある。

しかし、日本が忘れてならないのは、日本が誇りある強靭な国家であり、日本の利益が米国、欧州、国際機関、中国の利益と必ずしも一致しないことだ。日本の国益は、日本の国家、国民と、美しい過去、明るい未来を守ることにある。そして明るい未来は、日本を先導して「戦後の霧」から脱出させる指導者の出現にかかっている。(2021.08.16国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)

関連する投稿


『腹黒い世界の常識』「まえがき」を特別公開!|島田洋一

『腹黒い世界の常識』「まえがき」を特別公開!|島田洋一

「本書は、反日勢力が仕掛ける各種工作の実態を明らかにし、対処法を示すべくまとめた」国際政治学者の島田洋一名誉教授が書きおろした理論武装の書にして、戦略の書の「まえがき」を特別公開。


中台平和統一も日本の一大事|織田邦男

中台平和統一も日本の一大事|織田邦男

欧州にとって「台湾有事」は所詮「対岸の火事」という本音が透けて見える。そして習近平は明確に台湾への「一国二制度」適用をやめ、統一後の人民解放軍進駐を決めた。


無限定の「LGBT差別禁止」の危険|島田洋一

無限定の「LGBT差別禁止」の危険|島田洋一

いま日本の国会では、差別の定義が曖昧なLGBT法案を、歯止め規定の議論も一切ないまま、性急に通そうとする動きが出ている。少なくともいったん立ち止まって、米国その他の事例をしっかり研究すべきだろう。


「植田日銀」の成否を左右する財政政策|田村秀男

「植田日銀」の成否を左右する財政政策|田村秀男

「異次元金融緩和が成功するか、失敗するかはそれぞれ5割の確率、日銀生え抜き組が総裁になって失敗すれば日銀という組織に傷がつく」(某日銀幹部)。そんな思惑もあって、金融経済学者の植田氏に任せるというのが真相だ。


党員除名で異質さを露呈した共産党|梅澤昇平

党員除名で異質さを露呈した共産党|梅澤昇平

もし日本に共産党主導の政権ができれば、猛毒が国民に及ぶのは必至だろう。国民が亡ぶか、共産党が自家中毒で亡ぶか、共産党内の騒動は見ものである。


最新の投稿


【今週のサンモニ】「サンモニ」の”恐喝”方法|藤原かずえ

【今週のサンモニ】「サンモニ」の”恐喝”方法|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


「子供1人生んだら1000万円」は、とても安い投資だ!|和田政宗

「子供1人生んだら1000万円」は、とても安い投資だ!|和田政宗

チマチマした少子化対策では、我が国の人口は将来半減する。1子あたり1000万円給付といった思い切った多子化政策を実現し、最低でも8000万人台の人口規模を維持せよ!(サムネイルは首相官邸HPより)


【読書亡羊】出会い系アプリの利用データが中国の諜報活動を有利にする理由とは  『トラフィッキング・データ――デジタル主権をめぐる米中の攻防』(日本経済新聞出版)

【読書亡羊】出会い系アプリの利用データが中国の諜報活動を有利にする理由とは 『トラフィッキング・データ――デジタル主権をめぐる米中の攻防』(日本経済新聞出版)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【今週のサンモニ】岸田総理訪米を巡るアクロバティックな論点逃避|藤原かずえ

【今週のサンモニ】岸田総理訪米を巡るアクロバティックな論点逃避|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


わが日本保守党|広沢一郎(日本保守党事務局次長)

わが日本保守党|広沢一郎(日本保守党事務局次長)

昨今の政治状況が多くの日本人の心に危機感を抱かせ、「保守」の気持ちが高まっている。いま行動しなければ日本は失われた50年になってしまう。日本を豊かに、強くするため――縁の下の力持ち、日本保守党事務局次長、広沢一郎氏がはじめて綴った秘話に投票3日前の想いを緊急加筆。