瀬戸内みなみの「猫は友だち」 第3回
全国でも指折りの有名「猫島」
「猫島」と呼ばれ、人口よりも猫の数のほうが多いといわれていた香川県・男木島で、その猫全頭に対して一斉にTNRが実施されたのはちょうど2年前。平成28年6月から9月にかけてだった。ニュースでそれを知った私は、遅れをとってはならじとあわてて取材に行ったものである。
なにしろ男木島はさらにその4年前、NHKの動物番組「岩合光昭の世界ネコ歩き」で紹介されて以来人気が急上昇し、全国でも指折りの有名「猫島」となっていたからだ。当時の住民は200人くらい、猫の数は約150。人より多いわけではなかったが、せまい集落では結構な密度だ。
TNRとは、飼い主のいない猫を捕獲(Trap)して不妊去勢手術を施し(Neuter)、元いた場所に戻す(Return)こと。ノラ猫を捕まえて殺処分するのではなく、世話をして見守りながら地域の住環境を良くしていこうという「地域猫活動」においては基本的な考え方とされている。
最大の目的は望まれない子猫が生まれることを防いで、将来的に生息数を減らしていくことだ。猫にとっては発情期のストレスから解放されるので、けたたましくサカリ声を上げたり、ケンカをして怪我をしたりすることもなくなるし、縄張りを主張するためのオシッコ=マーキングもしなくなる。人間にとっては、騒音や糞尿に悩まされることなく、屋根の上でよく太った猫がのんびり昼寝をしているという平和な光景だけが楽しめるという、いいとこ取りの方法なのだ。
の、はずだったのだが……。人間というのはどこまでも自分勝手で、欲深いものである。