朝日手法の恐ろしさ
一人の老人を吊るし上げ、集団リンチするという“どこかの国”のような事件が日本で起こった。そこには事実の確認も、礼儀も、容赦も、遠慮も、何もなかった。「ここは日本なのか」と思わせる異常な騒動だ。
反日メディアや反日日本人にとっては“いつものやり方”だが、今回、顕著に現われたいくつかの特徴を見てみたい。
ターゲットにされた森喜朗氏は本当に「女性を蔑視」し、実際に「差別発言をしたのか」というのがまずポイントだ。おそらく当の組織委員会での森氏の発言全文を読んで集団リンチに加わった人は殆どいないだろう。
なぜなら森氏の話は約四十分、テープ起こしすると約8400字、400字原稿用紙で21枚にも及ぶ膨大なものだったからだ。その中の500字ほどが取り上げられた部分だ。
ここで森氏は「女性は優れているので、欠員が出たら必ず(後任に)女性を選ぶ」という話をしている。
しかし、森氏の特徴は、結論を簡単には言わないことだ。時に脱線し、寄り道しながら最終的にはそこへもっていく。政治部の人間なら誰でも知っている“森話法”だ。
今回も結論に持っていく前に自分が会長を務めていたラグビー協会では女性理事に競争心が強く、会議に時間がかかったという“脇道”を通っていった。
だが、この脇道に噛みついたのが朝日新聞だ。ご存じ、発言の切り取りとつなぎ合わせでは、他の追随を許さないメディアである。
当日二月三日の午後六時過ぎには、早くも、〈「女性がたくさん入っている会議は時間かかる」森喜朗氏〉との記事をデジタル配信した。
森発言を耳にし、かつ、朝日の手法を知っている人間には、「あぁ、ここを取り上げたか」と納得し、「朝日は女性差別に仕立て上げ、問題化するつもりなんだな」とピンと来ただろう。
だが、“森話法”を知る記者なら記事のタイトルは逆にこうなるだろう。
〈「女性は優れている。だから欠員が出ると女性を選ぶ」森喜朗氏〉
まるで正反対である。もちろん朝日では、後者は記事にならない。「角度がついていない」からだ。角度をつける、というのは朝日社内の隠語である。
自分たちの主義主張や社の方針に都合のいいように事実をねじ曲げて記事をそっちに“寄せる”ことを意味する。
目的は菅総理退陣
今回の場合は、森氏と東京五輪に打撃を与え、できれば中止に追い込み、選挙で自民党を敗北させ、菅義偉首相を政権から引きずり降ろすことが目的にある。
朝日の記事はすべて「そこ」に向かっており、事実は都合よく変えられるわけである。
森発言を「女性蔑視」として糾弾するために必要なのは、いかに問題を国際化させるかにある。外国メディアに取り上げてもらい、海外で問題になっていることを打ち返し、国内世論を誘導するのだ。この時、最重要なのは誰であろうと反対できない“絶対的な”言葉や概念を持ち出すことだ。
今回、朝日、毎日、NHKなどの英語版で使われたのは、Sexist(性差別主義者)、discrimination against women(女性差別)、contempt for women(女性蔑視)という言葉だ。
海外では、この言葉を用いて「組織委のトップが性差別主義者であり、許されざる女性蔑視発言をおこなった」としてもらえればそれだけでいい。
事実は関係ない。これが報道されれば、今度はそれを持って、海外の有力スポンサーや政治家、あるいは、日本国内の政治家、財界人、スポンサー、識者、スター等のコメントを取ればいいのだ。
「差別」「人権」「蔑視」というレッテル貼りに成功すれば、これに反対することはできない。もし反対すれば、今度は自分が槍玉に上がるからだ。
そして一般の人間も巻き込んで“集団リンチ”へと持っていけば完成である。こうして癌と闘い、週3回の人工透析の中でがんばってきた83歳の森氏は辞任に追い込まれた。
日本そのものに打撃を与えたい朝日、すなわち反日メディアの活動は、実は成功と失敗をくり返している。1991年、慰安婦の「強制連行」を創り上げ、“Sex Slave(性奴隷)”という言葉で世界中に慰安婦像を建てさせることに成功した朝日は2020年、記事が「捏造」だったことを最高裁に認定された。
また2014年5月、福島第一原発の吉田昌郎所長を聴取した政府事故調のいわゆる「吉田調書」を切り貼りして9割の所員が「所長命令に背いて」逃げたという虚偽をでっち上げたが、撤回と謝罪に追い込まれた。
その朝日にとって、今回は、久しぶりの勝利だったと言える。だが、日本を貶め続けるこのメディアは2000年以降、ABC公査で約310万部(37%)もの「部数減」に見舞われている。とっくに、その手法は良識ある大多数の日本人から呆れられ、ソッポを向かれているのである。
(初出:月刊『Hanada』2021年4月号)