珍味の味わい
子供の頃、とても神経質だった。机に物を置いた時、机の端と置いた物が水平になるようにしないと気持ちが悪かった。
几帳面といえばそうなのかもしれないが、部屋の片付けとかはやらないので散らかっている。左右対称に関しても、神経質なくらい敏感だった。散髪に行っても、鏡に映る自分の髪の盛り上がりが左右少しでも違うと、それを美容師さんに注文を付けていたので、常に苦笑いされていた。
おそらく「面倒臭いな、このクソガキ」と思っていたのだろう。
怪獣ソフビを集めだした頃も、ソフビを正面から見て左右非対称の物が好きになれず、造形的に体が歪んでいるものなんてもってのほか、コレクションとして欲しいと思わなかった。
怪獣ソフビが増えていき棚に陳列する時も、全ての怪獣を正面に向け足先を揃え一直線に並べた。さらに数が増えていくと尻尾が長い怪獣もあるので真正面だと棚の奥に尻尾がぶつかってしまうため斜めに飾るようになった。
この時から、今までと違う角度から怪獣達を眺めるようになる。数がとてつもなく増えていくと尻尾を各々の隙間に通さないと置ききれなくなり、様々な角度で飾らざるを得なくなった。
その結果、様々な角度から怪獣ソフビを眺める事になり、怪獣ソフビの味がより理解出来るようになっていった。
これは怪獣に限った事でなく、様々な事に関し視野が広がっていったという事だろう。
マルサン(ウルトラセブン時期は社名がマルザン)の怪獣&宇宙人ソフビの中には左右非対称のものがある。左右非対称のデザインではなく、単に体が歪んでいるもので、おそらく原型師の癖だろう。
コレクションを始めた頃は、そういったソフビが好きになれずコレクションに加える事はなかった。マルザンのウルトラセブンの怪獣&宇宙人にはそういったものが多かったので、セブン関連のマルザンソフビは若い頃は手に入れたいとは思わなかった。
時が経ち、カラスミや豆腐ようなどの珍味の味がわかるようになった頃、歪みのあるソフビ達の味もわかるようになっていった。歪みは造形師の癖であるが、そこから来る温かみのあるデフォルメ感と躍動感を感じられる。
それはやはり様々な角度からソフビ人形達を眺めてきた影響だろう。
マルザンのミクラス。骨盤の歪みが特徴的。
マルザンのエレキング。今にも動きそうな躍動感がある。
それでは左右の歪みのある怪獣ソフビ達をご紹介しよう。ミクラスは一見左右対称感はあるが、骨盤の歪みや肩の高さのズレもある。
ミクラスと劇中で戦ったエレキングはもっと左右非対称だ。昔はこの歪みが凄く嫌だったのだけれど、ちゃんと見ると、今からこちらに向かって来そうな足の構え、戦う姿勢が感じられ凄く恰好が良い。