コロナが開く改憲への道
西村氏はいま、こうした状況も念頭に強制力を持つ法整備の必要性を説く。安倍内閣の危機対応への国民の評価は厳しいが、それは安倍首相と政権への批判であると同時に、日本の戦後体制の欠陥に対する批判でもあろう。100%の性善説に基づき「国際社会の善意」に日本国民の命を託し、軍事力も持てない国が国難に直面すると、今回のような不十分な対応しかできない。国民の生命と健康を守るために、命令権と罰則を科す改正を考えるべきだと語った西村氏の言葉が説得力を持つゆえんである。
特措法改正への議論は、特措法を支える憲法の規定として、緊急事態条項を憲法に書きこむ形で議論されている。残念ながら自民党の議論は活発だとは到底言えない。特措法改正に前向きな西村大臣の姿勢を、日本国の、遅いけれども、必ず成し遂げられなければならない憲法改正につなげていきたい。(2020.05.11 国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)
著者略歴
国家基本問題研究所理事長。ベトナム生まれ。ハワイ州立大学歴史学部卒業。「クリスチャン・サイエンス・モニター」紙東京支局員、日本テレビ・ニュースキャスター等を経て、フリー・ジャーナリストとして活躍。『エイズ犯罪 血友病患者の悲劇』(中公文庫)で大宅壮一ノンフィクション賞、『日本の危機』(新潮文庫)を軸とする言論活動で菊池寛賞を受賞。2007年に国家基本問題研究所(国基研)を設立し理事長に就任。2010年、正論大賞を受賞。著書に『何があっても大丈夫』『日本の未来』『一刀両断』『問答無用』(新潮社)『論戦』シリーズ(ダイヤモンド社)『チベット 自由への闘い』(PHP新書)『朝日リスク』(共著・産経新聞出版)など多数。