スマホで子供は馬鹿になる!|川島隆太(東北大学加齢医学研究所所長)

スマホで子供は馬鹿になる!|川島隆太(東北大学加齢医学研究所所長)

東北大学加齢医学研究所が恐ろしい調査結果を発表した。「子供のスマホ使用時間が長くなればなるほど、学力が下がる」。15~19歳のスマホ利用率は95%、ほとんどの学生がスマホを持っている。親もなにかと便利だから持たせるのだろう。しかし、このレポートを読んだ後も、あなたは子供にスマホを持たすことができるだろうか。「脳トレ」でもお馴染み、川島隆太教授が明らかにしたスマホの危険性とは――。


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1日1時間以上スマホを使うと子供の学力が下がる

私は東北大学加齢医学研究所で脳の研究をしています。加齢医学研究所は仙台市教育委員会と学術協定を結んでおり、2013年から、子供の学習意欲を伸ばすにはどうすればいいのかを脳科学の視点で諮問するようになりました。
 
教育委員会はゲームやテレビが子供の学習意欲を削いでいるのではないかと考えていましたが、最近はゲームをするのも、動画を見るのもすべてスマホでできてしまう。児童・生徒が普段どれくらいスマホ、タブレットを使っているのか、またそれによってどんな影響があるか調べてみようということになりました。
 
仙台市教育委員会と共同で毎年、仙台市立小・中・高校生約7万人を対象に、「仙台市標準学力検査」と「仙台市生活・学習状況調査」を実施しています。
「仙台市標準学力検査」は、基礎知識と応用力を調べるテスト(中一は国語、数学、理科、社会の4教科。中2、中3は英語を加えた5教科)。

「仙台市生活・学習状況調査」は、好きな授業に関する質問や学習意欲についてなどのアンケートです。

「ふだん、1日当たりどれくらいの時間、携帯電話(スマートフォンも含む)でメールやネットゲームをしたり、ネットを見たりしていますか」などの質問があり、この2つの調査を元に解析したのですが、恐ろしい事実がわかりました。それは、「1日1時間以上スマホを使うと子供の学力が下がる」ということです。
 
スマホ(タブレットも含む)使用が1時間以内であれば平均点は上がるのですが、1時間を超えると下がり始めます。使用が1時間増えるごとに、平均で国語2・3点、数学4・6点、理科3・8点、社会3・8点下がるのです。
 
学力を下げる要因として、2つの可能性が考えられました。1つめは、スマホ使用による睡眠不足。2つめは、家庭学習の時間がスマホによって奪われている可能性です。
 
しかし、どちらも違っていました。

スマホの使用が長くなればなるほど成績がダウン

まず、睡眠不足の可能性を調査しました。睡眠不足の子供の成績が悪いのは、文科省などの調査によってわかっています。いろいろな説明がなされていますが、おそらく理由は2つ。1つは、レム睡眠(浅い睡眠)の数が足りないこと。レム睡眠は脳に記憶を固定させる役割があると言われています。睡眠時はレム睡眠とノンレム睡眠を繰り返しており、睡眠時間が短いと、このレム睡眠の数が減って記憶が定着しない。
 
もう1つは、ミトコンドリアの機能低下です。細胞のなかにはミトコンドリアというエネルギーを生産する細胞内構造物があり、睡眠不足になると、ミトコンドリアの機能が低下することが医学的にわかっています。ために、脳が細胞レベルでエネルギーをうまく作れなくなる。
 
そこで私たちは、子供を睡眠時間が6時間の群、6~8時間の群、それ以上寝ている群の3つに分けてスマホの使用時間を調べてみました。結果、きちんと寝ている子であっても、スマホを使用したら使用した分だけ平均点が下がっていたのです。
 
スマホによって学習時間が奪われているという仮説も検証しました。この場合も先ほどと同様、家でまったく学習しない群、1時間程度する群、2時間以上やる群に分けて調べてみたのですが、どの群も、やはりスマホの使用が長くなればなるほど成績が下がっていたのです。
 
ことに数学は下がり方が顕著で、自宅で2時間以上勉強する群であっても、使用時間が1時間増えていくごとに平均点が約5点下がっていきます。1時間程度勉強する群のなかで、スマホを使わない子と3時間使用する子に分けてみると、前者の平均点は72点、後者は61点。
 
スマホをまったく使わない子、3時間使用する子の数学の平均点は前者63点、後者54点。
 
家で勉強しない子は学校の授業でしか記憶が作られませんから、スマホを長時間使用することで、学校で学んだことが頭から消えてしまったのがわかります。無為に時間を過ごすよりも、スマホを使っている時間のほうが悪影響があるということです。
 
睡眠を十分とっていようがいまいが、自宅で勉強しようがしまいが、スマホを1時間以上使ったら使った分だけ学力に影響があるのです。

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LINEは一時間未満の使用でも影響あり

調査結果からは、学力の低い子ほどスマホを使いたがるのではないか、という仮説も成り立ちます。それを検証するために、翌2014年から子供たちの成長を3年間、追跡調査しました。
 
すると、成績のよかった子供がその後、スマホを持ち始めると成績が下がり始め、逆にスマホの使用をやめた、あるいは1時間未満にした子供は成績が上がったのです。
 
ただ、スマホの長時間使用が習慣化してしまっていた子供に関しては、いきなり使用を制限しても、1年で成績は若干しか上がりませんでした。スマホ依存が深刻な子供は、回復に時間がかかるようです。
 
これらの結果から、スマホの子供に与える影響は直接的なものであることが明確になりました。
 
最初の調査では、LINEアプリを使用している子供の成績の下がり方が著しいこともわかりました。先述したように、スマホは1時間未満であれば平均点は上がりますが(1時間未満の使用で抑えることができるということは、時間を自分でマネジメントする能力があると考えられます)、LINEなど通信アプリに関しては、1時間未満でも影響が見られた。30分でも使えば、各教科の平均点が下がっていくのです。
 
教科別に見ていくと、1時間LINEを使用するごとに国語2・5点、数学4・8点、理科4・1点、社会は3・8点下がります。なぜLINEは、1時間未満でも影響があるのか。既読マークの表示や通知音が頻繁に鳴るたびに相手の反応が気になってしまい、勉強の集中力や注意力を低下させることが考えられますが、それだけでは説明がつかないことが多く、今後、継続調査が必要でしょう。

スマホをいじると、前頭前野の血流量が下がる

2016年はスマホに関するアンケート内容を増やし、使う時のシチュエーションやどんなアプリを使っているかを調べ、LINE同様、アプリごとに影響に特徴はないか調べてみました。
 
アンケート結果を解析して驚いたのは──教育委員会の方たちも驚きを隠せませんでしたが──スマホを持っている子供の約8割が、家での学習中にスマホを使用しているということです。
 
では学習中、どのようにスマホを使用しているのか。音楽を聴いているのが7割、ゲームをしているのが全体の3分の1、動画を見ているのが3分の1、LINEが3分の1。足していくと分母を超えてしまいますから、複数のアプリを使用している子供が多くいることになります。
 
アンケートを解析してわかったことは2つ。
 
1つは、LINEを除いて音楽、動画、ゲームなど、机に向かっている時に1つのアプリしか使っていない場合は学力に与える影響に差はないこと。2つめは、複数のアプリを切り替えながら、つまりマルチタスキングをしながら勉強している場合は成績が大きく下がることです。
 
スマホと学力の因果関係ははっきりしているわけですが、なぜスマホを使用すると学力が下がるのか、明確な理由はまだ解明できていません。

スマホをいじると、前頭前野の血流量が下がることがわかっています。前頭前野は記憶する、学習する、行動を抑制する、物事を予測する、コミュニケーションを円滑にするなど、人間ならではの働きを司っている部分。そこの働きが抑制されるわけです。
 
これはテレビを見たり、ゲームをしたりしている時、あるいはマッサージを受けている時にも同じ状態になります。つまり、一種のリラックス状態になる。この弛緩した状態が長時間続くことで、脳に何らかの影響を及ぼすのではと推測されます。
 
スマホの問題で悩ましいのは、科学的根拠を出すのが非常に困難な点です。いまの時代、動物実験ができなければ、生命科学の世界では“科学”とは認められません。動物実験をして、遺伝子発現やタンパク質の組成の変化などを見るなどが必要なのですが、実験動物はスマホを使うことができない。
 
今後は現象論として、継続して調査を積み重ねていくしかないと考えています。

取材を受けたが、ボツに

これらのデータは3年間、仙台市の小学校高学年、中学生約4万人を対象に調査した結果で、信頼性の高いデータです。しかし、こういったスマホのリスクについて、最近は雑誌で少し取り上げてくれますが、新聞、テレビなどの大マスコミはなかなか取り上げてくれません。
 
関西のある新聞社の記者が、スマホの問題について取材に来ました。その記者は非常に熱心に取材をしてくれて、「これは重要な問題です。大きく取り上げましょう!」と張り切っていたのですが、後日、泣きながら電話がかかってきた。広告主(携帯会社やスマホを製造している電機メーカー)からのクレームを危惧して、上司がその記事をボツにしてしまったというのです。
 
また、私たちがスマホのリスクについて記者発表しようと動いていると、教育委員会のことを取材している某地元紙の記者が教育委員会に対し、「そのデータを表に出すな」と恫喝してきたこともありました。
 
最近は新聞社も部数が減り、広告も入らなくなってきていますから、新聞社側の気持ちもわからないではありません。ただ、心ある“普通の大人”であれば、この事実を知れば世間の人に知らせてくれると考えていただけにショックでした。
 
自分たちのできる範囲で、スマホのリスクについて地道に啓蒙していくしか方法はないと考え、その一環として、毎年、調査結果をまとめたパンフを仙台市内の学校に配るなどしています。
 
親や先生が、いくら頭ごなしに「スマホを使うな」と子供に言っても彼らの耳には届きません。大人がすでにスマホ中毒になってしまっており、「どの口が言うんだ」と言われてお終いです。きちんとデータを示して、説明してあげないといけない。

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「スマホがなければ困る」という“思い込み”

学生たちは必ず、「スマホはコミュニケーションの大切なツール。ないと困る」と言います。
 
しかし、私たち仙台市民は、東日本大震災の直後、約1カ月、電力の供給がなく、ケータイ、スマホを使うことができない時期を経験しています。私は彼らにこう訊くのです。
「あの大震災でスマホが使えなかった時、家族、友人とのコミュニケーションはどうだったんだい?」
 
彼らはハッと気がついたように、「あの時のほうが、いまよりも遙かに濃密なコミュニケーションが取れていた」と答えます。あの時は、お互いに寄り添いあわないと生きていけない極限の状態だったこともあるでしょうが、スマホがなければないで、もっと質の良いコミュニケーションができるのです。
 
しかし、電気が通じて再びスマホが使えるようになると、皆そのことを忘れてしまいました。
 
もう1つの学生の言い分はこうです。

「もの調べ、辞書代わりに使っている。すぐに調べられるから時間の短縮になる」
 
私は彼らにこう訊きます。

「時間が短縮されるのはいいことだと私も思います。それで、君は余った時間をどう過ごしているの?」

「……スマホです」
 
スマホを使う時間が、無為に過ごすよりも害があることは先ほど説明しました。こう言うと、スマホで短縮された時間をスマホに費やすことがいかに無駄であるか、彼らは気がついてくれます。
 
余談ですが、スマホでウィキペディアや電子辞書を使って調べている時の脳を見ると、ほとんど働いていません。
 
一方、紙の辞書で調べものをする場合は脳が活性化します。辞書を繰る時に、「この文字の画数や偏は……」 「大体、ここらへんに調べたい単語があるはずだ」など予測が必要になり、頭を使うからです。
 
こういった啓蒙活動が功を奏して、スマホの使用を控える学生が少しずつですが増えています。
 
私が顧問を務めている兵庫県の小野市では、スマホを使うとどの程度学力が下がるかというデータのグラフを、グラフの読み方の例として授業に取り入れています。小野市のある小学校では、在校生が自主的に、屋上にスマホの使いすぎを警告する幕を掲げるようになりました。

リスクを知ることが大事

私はスマホのリスクを調べるまで、スマホに対してとくに問題意識を持っていませんでした。ただ、電車に乗るとみんながスマホをいじっている様子や、カフェなどで若いカップルが会話もせずにお互いにスマホをいじっている光景を目にして、何か異常だなと思う程度でした。
 
いまから12、3年前、私の息子たちも大学生、高校生くらいからガラケー、スマホを持ち始めましたが、わが家ではひとつのルールを設けました。「勉強中、寝る前は、ケータイを居間に置いておく」。勉強中、就寝前にダラダラ使うのが目に見えていたからです。いま考えれば、そのルールは正しかったように思います。
 
私自身もガラケーに加えてスマホを持っていますが、基本的にはメールのチェックくらいで使用は最小限にしています。
 
私たちは2017年の4月に、仙台市のすべての就学生に「勉強中は必ず電源を切る。それができない、あるいは自信がない人は絶対に持ってはいけない」という強いメッセージを出そうと考えています。
 
スマホを子供に持たせるときに大切なのは、そのリスクをきちんと教えること。スマホには中毒性があります。中毒性があるものへの耐性は、大人も子供もありません。ただ麻薬とは違い、悪い面ばかりではないことを考えると、これから持たせるのであれば、お酒やタバコ同様、20歳を過ぎてからのほうがいいのではないか、と私は考えています。
 
お酒を飲みすぎると、肝臓を壊したり、アルコール中毒になったりするわけですが、いまはそのリスクを知らずに、子供に楽しくなるからとドンドンお酒を飲ませている状態なのです。

※川島隆太教授がスマホの危険性を指摘した著書『スマホが学力を破壊する』 (集英社新書)が好評発売中

著者略歴

川島隆太

東北大学加齢医学研究所所長。1959年、千葉県生まれ。東北大学医学部卒、同大学院医学研究科で学び、医学博士となる。スウェーデン王立カロリンスカ研究所客員研究員、東北大学加齢医学研究所助手、講師、教授、同研究所スマート・エイジング国際共同研究センターセンター長等を経て現職。研究テーマは脳機能イメージング、脳機能開発等。


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