北海道札幌市・ツキネコカフェにて|瀬戸内みなみ

北海道札幌市・ツキネコカフェにて|瀬戸内みなみ

瀬戸内みなみの「猫は友だち」 第8回


瀬戸内みなみの「猫は友だち」 第8回

瀬戸内みなみの「猫は友だち」

私がヨボヨボのおばあちゃんになっても

私は心配性なので、やってくるかどうかも分からない未来のことを、今からとても心配している。

猫のいない生活など考えられない。でも私がヨボヨボのおばあちゃんになったとき、猫は私のそばにいてくれるのだろうか。「年寄りが猫を飼うなんて」と周囲に反対されるかもしれない。自分の余命と猫の寿命とを比べて、自ら諦めてしまうかもしれない。

……えーっ、そんなのはイヤだ!!

猫の永年預かり

と悶々としている私の前に、福音のように立ち現れたあるシステムがあった。

それは「猫の永年預かり」。

飼い主のいない猫は世の中にあふれているのに、それを保護する団体が猫を譲渡する条件はとても厳しい。高齢者が猫を飼いたいと申し出ても、たいていは年齢を理由に断られてしまう。

猫も高齢者も、団体も

それならその高齢者に万一のことがあったときに、もう一度その団体が引き取ればいい、というのが「永年預かり」だ。

「預かり」としながらも、実質は譲渡。これなら人手やお金にいつも困っている団体も助かる。猫も自分の家ができる。

もちろん猫を飼いたい高齢者にとって、これ以上の喜びはない。三方いいとこ取りなのだ!

ツキネコカフェ

「年齢は関係ありませんよ。ちゃんと人間同士のコミュニケーションが取れるひとだと判断すれば、私は猫を渡します」

と話すのは、制度を立ち上げたNPO法人「猫と人を繋ぐツキネコ北海道」代表の吉井美穂子さんだ。

札幌市内で猫の保護施設「ツキネコカフェ」と「ニャイダーハウス」を運営している。「永年預かり」の条件はひとつ、万が一のときに「ツキネコ」に連絡が行くようにしておくこと。

私には猫が、猫には私が

「ツキネコ」からこれまで5匹の猫を「永年預かり」した久野(くの)千津子さんが生き生きと、猫との暮らしを話してくれる。

「両親と夫を見送ってひとりになり、もう私を必要としてくれるものはいないのだと感じて毎日辛かった時期がありました。

でも今は、毎日がとても幸せ。猫たちには私が必要なんだと思えるんです」

私の老後の安心のために……

私がこのシステムを初めて知ったのはもう4年前で、当時新聞や週刊誌でも取り上げられた。全国から保護団体も視察に来ている。

なのに「ツキネコ」以外でこの制度を運用しているところはまだ聞かない。もっと全国に広まってもいいと思うのだが。

たくさんのひとにこのシステムのことを知ってほしい。そして全国で、お年寄りと猫との幸せな出会いがもっと増えることを願ってやまない(私の老後の安心のために……!)。

(初出:月刊『ねこ新聞』2019年1月号)

※ツキネコカフェへのお問い合わせは、「猫と人を繋ぐツキネコ北海道」info@tsukineko.net

※「日本で唯一の『猫文学』新聞」、月刊『ねこ新聞』については公式サイト( http://www.nekoshinbun.com )をご覧ください。

著者略歴

瀬戸内みなみ

https://hanada-plus.jp/articles/202

作家。広島県生まれ。上智大学文学部卒業。会社勤務などを経て、小説、ノンフィクションなどを手掛けている。テーマは猫と旅と日本酒。著書に『にっぽん猫島紀行』(イースト新書)。月刊『Hanada』で「わが人生に悔いなし」を連載中。

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末永恵

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米国留学(米政府奨学金取得)後、産経新聞社入社。産経新聞東京本社外信部、経済部記者として経済産業省、外務省、農水省記者クラブなどに所属。その後、大阪大学特任准教授を務め、国際交流基金(Japan Foundation,外務省所管独立行政法人)の専門家派遣でマラヤ大学(客員教授)で教鞭、研究にも従事。 政治経済分野以外でも、タイガー・ウッズ、バリー・ボンズ、ピーター・ユベロス米大リーグコミッショナー、ダビ・フェレール、錦織圭などスポーツ分野の取材も行う。


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