生命保険の強制解約の後、40代女性死亡
前橋市で働く、ある40代のシングルマザーは生活が苦しく、国保料を納めていない時期があり、延滞金を含めて50万円程度の滞納があった。昼も夜も働き詰めの中、約12 万円の給料が振り込まれた時、市から銀行預金を差し押さえられ、強制的に10万円を徴収された。
女性は友人に借金をして日々をしのいだそうだが、その後、生命保険を強制解約させられて解約返戻金を市に徴収されたという。
「この女性は6年前にがんのため、亡くなりました」と、仲道氏。彼は怒りに燃える目をしてこう話した。
「彼女は毎月2万円ずつ滞納分を支払っていたのです。しかしそれを4万円にしなければ生命保険を解約する、と市に脅されました。これは違法ではありません。市税を滞納している市民が生命保険に加入しており、解約返戻金がある場合には、契約者の意思によらずに生命保険契約を一方的に解約することができます(最高裁1999年9日9日判決)。
しかし、生命保険の契約内容が資金運用や蓄財の場合と、生活保障を主目的にする場合とで区別せず、解約返戻金があるという理由だけで強制解約に及ぶことはあまりに乱暴ではないでしょうか」
全国規模でみても件数が多い前橋市の事例
前橋市は国保料を含め市税滞納による財産差し押さえ件数は2004年に896件だったものの、5年後の09年には8992件。当時前橋市は人口約34万人だが、隣の高崎市では人口37万人以上であるにもかかわらず差し押さえ件数はその半数もない。全国規模でみても前橋市の差し押さえ件数は多かった。
「県内の他の市では、私が滞納者との間に入って自治体と話し合うと『それなら1万円ずつでも入れてください』ですとか、多重債務によって自己破産の手続きを進める人なら『手続きが終わったら教えてください』と言われる。
しかし前橋市の場合は何を言っても『私どもは毎月○万円ずつ必ず納めてもらいます。そうでなければ給与を全額差し押さえます』という姿勢です。私は依頼があれば滞納者の財産調査をして、消費者金融に借金をしている人なら払いすぎたお金がないかなどの確認をします。ですから『調査をする数か月間待てませんか』とお願いするのですが、『待てない』の一点張りなのです」(仲道氏)
強硬に納税を迫られるだけでなく、給与や売掛金、さらには銀行預金といった財産を突然差し押さえられて生活困窮に陥る人々がいるという。