【読書亡羊】本当は怖いモディ首相の「寝てない自慢」と「熱い胸板自慢」  湊一樹『「モディ化」するインド』(中公選書)

【読書亡羊】本当は怖いモディ首相の「寝てない自慢」と「熱い胸板自慢」 湊一樹『「モディ化」するインド』(中公選書)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


モディが〝独裁者〟になる日

実際に、本書が指摘するようなモディ政権、インド政府のウェブを使ったプロパガンダの一端が垣間見える事例が日本にも飛び火している。

筆者の湊氏が本書を紹介する動画をツイッターに投稿したところ、インドのモディ支持者らしき人々が殺到し、批判を浴びせたという(湊氏のアカウントは凍結されたとの情報もある)。

本書を読んだうえでそうした現象まで起きているとなると、いくらインドが対中包囲のコマの一つになりうるとしても、インドという国やモディ政権に対しては失望を禁じ得ない。

だが、ここで一気に失望する「だけ」では、本書を読んだ意味が半分くらい失われてしまうようにも思う。なぜなら、その失望の大半は「勝手な期待で思い描いていたインド」のイメージが裏切られたことによるものだからだ。

冷静な判断が必要とされる国際政治の場で、インドがたとえロシアと蜜月関係にあったとしても、「対中包囲網の要」と考えて関係を強化するという判断はありうるのだろう。好き嫌いではなく、必要性に応じて連携するのが外交や安全保障の要諦だからだ。

モディ首相のやり方はともかく、中国以上の14億人もの国民(国勢調査は2011年以降行われていないというが)を束ねるには、きれいごとの民主主義では立ち行かないのだろう。

モディ上げのSNS上の書き込みに「彼は22時間働き、2時間しか寝ない」といった「寝てない自慢」があり、モディ自身も「厚い胸板」を強い指導者のアピールポイントとしていたとの指摘には思わず笑ってしまった。

あらゆる手を用意周到に巡らせて、14億人の頂点に立ったモディ首相の人物像にも、ある意味では大いに興味を惹かれるところではある。

インドの存在感が増しているのは事実であるからこそ、モディという〝独裁者〟になりつつある人物と、そのリーダーが率いるインドという国の本質を押さえておく必要はあるだろう。まずは本書を読んで「え、そうだったの」と驚くところから始めたい。

梶原麻衣子 | Hanadaプラス

https://hanada-plus.jp/articles/712/

ライター・編集者。1980年埼玉県生まれ。月刊『WiLL』、月刊『Hanada』編集部を経てフリー。雑誌、ウェブでインタビュー記事などの取材・執筆のほか、書籍の編集・構成などを手掛ける。

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