中国海警を反面教師にせよ
こうした「海保を軍事組織に!」の声の高まりは、対する中国が海警を国務院という行政組織の隷下から中央軍事委員会―人民武装警察の隷下へと転属させたことが拍車をかけている。
「海警」とあたかも警察組織であるかのように装い、船もコーストガード系の白い塗装を施しながらも、その実態は軍隊組織に近く、武器使用規定も苛烈なものとなっている。だからこそ、日本もこれに対応すべく海保を軍事組織にすべきだ、という論理だ。
だが本書が指摘するように、中国海警の活動の根拠法になっている「海警法」は国際法に抵触しかねない規定や条文を設けており、そうであるがゆえにますます国際的信頼を低下させている。
中国に対抗するあまり、中国海警と同じような存在になることは、日本にとっては国際的信頼を得るという面から見てもプラスとは言えないだろう。
本書は海保でなければできない国際貢献についても詳しく触れている。海保法25条についても、まずは本書を読んでから議論に臨みたい。
ライター・編集者。1980年埼玉県生まれ。月刊『WiLL』、月刊『Hanada』編集部を経てフリー。雑誌、ウェブでインタビュー記事などの取材・執筆のほか、書籍の編集・構成などを手掛ける。