被災地支援会議より新年会を優先…川勝知事の「知事失格」言行録|小林一哉

被災地支援会議より新年会を優先…川勝知事の「知事失格」言行録|小林一哉

新年早々、リニア妨害宣言した川勝知事。 しかし、知事失格の言動はこれだけではなかった


また、正月1日の新聞各紙に折り込み配布された静岡県広報紙「しずおか県民だより」2024年1月1日号を見てびっくりした。
 
見開きページの新春知事インタビューで、川勝知事べったりの?リニア偏向報道?を続けてきた元静岡新聞論説委員長の中島忠男氏をインタビュアーに起用していたのだ。
 
中島氏は、静岡新聞社を退社して、同社関連の広告代理店、保険代理店などの業務を行うSBSプロモーション(本社・静岡市)常務取締役に就いている。
 
SBSプロモーションは静岡新聞社・静岡放送と連携して広告営業事業などを行い、静岡県からも広告、イベント事業などを請け負っている。
 
県民だよりを所管する県広報課は、SBSプロモーションへの広報事業発注を認めている。
 
つまり、SBSプロモーションは静岡県の「利害関係者」に当たるのだ。
 
それなのに川勝知事の希望で、中島氏の起用を決めたのだという。
 
当然、県広報課は便宜供与を否定するが、「利害関係者」中島氏と川勝知事との親密な関係を見れば、「黒い関係」の疑いを抱くのがふつうである。
 
中島氏は、静岡新聞記者時代、川勝知事のリニア問題での無責任な主張にひと役買い、JR東海を批判して、騒ぎをひたすら大きくする役割を務めた。
 
県内の購読率が非常に高い静岡新聞の中島氏の記事は、川勝知事の主張を支持する世論誘導の役割を果たした。
 
これまでのリニア報道を通じて、中島氏の貢献ぶりを川勝知事は高く評価、だから静岡県の「利害関係者」とわかっていても、中島氏をインタビュアーに起用したのは間違いない。

あまりにも危険な関係である。
 
それだけ、川勝知事は、リニア問題などを通じて、中島氏に強い恩義を感じていたのだろう。
 
このため静岡新聞社・静岡放送主催の新年会となれば、重大な公務を欠席することを選んだのだろう。
 
新年早々の2つの事例からも、川勝知事のあまりの傲慢ぶりがうかがえる。
 

コロナワクチン接種を拒否

これまでリニア問題で、さまざまな傲慢ぶりを紹介してきた。
 
もう1つ、リニア問題のように知られていないが、2020年以来、新型コロナウイルスの世界的大流行が起き、日本中がてんやわんやになった中で、川勝知事はコロナワクチン接種を拒否し続けた。
 
当時、政府はコロナ感染防止のための緊急事態宣言を発令する中、1日100万回のワクチン接種を目標にした。
 
川勝知事は県政トップの立場で、高齢者を中心に県民の接種を強く働き掛ける役割を果たした。
 
しかし、記者会見で、川勝知事は「わたしがコロナワクチンを服用すると、アナフィラキシーショックを起こして確実に死ぬ、といろいろな医師が言っている」などとワクチン拒否の理由を述べた。
 
アナフィラキシーショックとは、アレルギー反応の1つで、手足のしびれ、冷や汗、高熱、ふらつきだけでなく、まれに意識障害、呼吸困難が短時間で起こり、時には生命に関わる場合もある。
 
今回の新型コロナワクチンは新たに開発された薬剤であり、被接種者にアナフィラキシーショックが起きるのかどうかは実際に接種してみなければわからない。
 
つまり、どんな名医を頼っても、副反応が起きるかどうかどうかわからない。それなのに、川勝知事の主治医は「コロナワクチンを服用すると、アナフィラキシーショックを起こして確実に死ぬ」と言ったらしい。
 
ワクチン接種を積極的に勧める発言を繰り返す県政トップの知事が、虚偽とも取れる発言でワクチンを拒否した。これも許されることではない。
 
しかし、こうして無事、川勝知事はコロナ禍を乗り切り、いまも傲慢ぶりを発揮している。
 
公務の被災地支援会議を欠席して、政務である静岡新聞社・静岡放送主催の新年会を優先したこととなどと同様に、川勝知事は何をやっても許されると考えているのだろう。
 
今回のリニア開業を「2027年以降」とJR東海が発表したことに対して、川勝知事が「部分開業」を唱えた理屈を聞いていて、その理由の一端が見えてきた。
 
静岡工区の未着工を理由に、開業を「2027年以降」に変更したのだから、静岡県とは関係のない区間は、2027年までに工事が終えて完成しているはずとの理屈をつけて、東京・品川~甲府間、岐阜・中津川~名古屋間では「部分開業」できるはずだ、と主張した。
 
理屈の上では、そうなるのかもしれない。
 
実際は、静岡工区だけでなく、他工区でも反対運動などが起きていて、土地買収が済んでない地域もある。だから、2027年までに他工区でも工事が終わるはずがないと言いたいのだ。

「部分開業」を求めれば、他工区の実情がはっきりと見えてきて、2027年開業遅れの理由を静岡工区の未着工だけにするJR東海の主張に言い掛かりをつけたいのだろう。
 

とんち話のたぐい

実際に、他工区で障害が全くないとは言えない。
 
神奈川県、山梨県、長野県それぞれに「土地トラスト」を駆使した反対運動があり、土地取得がすべて順調に進んでいるわけではない。
 
ただし、静岡工区の問題とは全く別である。大きなお世話である。

川勝知事の「部分開業」論を聞いていて、一休さんのとんち話『このはしわたるべからず』を連想させる。
 
『このはしわたるべからず』の立て札があるにも関わらず、一休さんは堂々と橋の真ん中を渡ってしまう。その後、橋の持ち主に、一休さんは「だから、端(はし)を歩かないで、橋の真ん中を渡った」と述べて、相手を負かした、という話である。

「部分開業」論は、そのたぐいの話である。川勝知事の「賢明(スマート)」ぶりは一休さんのとんちと変わらない。
 
しかし、とんち話は非常にわかりやすいだけである。実際には、それでは済まない。
 
静岡県民は、県内に停車駅のないリニアには関心が非常に薄い。
 
だから、川勝知事がいくら傲慢な姿勢で反リニアを主張しても、知事の政治姿勢に疑問を抱くことはない。
 
だから、わかりやすい理屈のとんち話をすれば、一休さんのような「賢明」さだけが伝えられる。
 
賢明(とんち話など)だけでなく、学歴(オックスフォード大学博士号など)、収入(年収2千万円超、退職金1期4千万円超)など川勝知事の「能力」という幻想に県民は支配されているようだ。
 
さて、来年6月の県知事選に対抗できるふさわしい候補を自民党県議団が擁立できるのか。それとも、その後の4年間も傲慢な川勝知事に支配されるままなのか。
 
新年早々から、さまざまな「川勝劇場」を見ていると、後者の可能性が高いようにしか思えない。

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