まだ未解決の「給料等の未返上問題」
筆者の周辺の県議に聞いても、今回の無免許運転が辞職に値するなど考えている者はいない。もし、県議全員の過去をちゃんと調べれば、同じような「古傷」が見つかる県議もいるはずである。
中山県議の補欠選挙は知事選挙と同時に行われる2025年夏まで、欠員となるから、それまで川勝知事は数の上では安泰である。
中山県議の「辞職勧告決議」は本人の未熟とも言える決断で簡単に決着してしまった。一方、川勝知事の「辞職勧告決議」にまつわる「給料等の未返上問題」は決着したわけではない。9月県議会が本番である。
9月県議会で給料等返上条例案が審議されるが、自民党県議団内部でも意見は分かれ、こちらもどうしていいのか困っている。
2021年暮れの「辞職勧告決議」の場合、川勝知事の提案した給与、ボーナス返上だけで済まされる問題ではないと、自民党県議団はあくまでも知事辞職を求め、給与等返上に関わる条例案の審議を拒否した。
その結果、川勝知事は静岡県議会側が条例案の審議を拒否したから、自らペナルティに科した「給与等の全額返上」ができないのはやむを得ないともっともらしいストーリーをつくり上げ、この問題を頬かむりした。
2年近くたって、川勝知事から給料等返上の条例案が提出され、この問題は蒸し返されるのだ。
実際には、2021年暮れの状況と事態は全く変わることなく、自民党県議団が求めているのは、川勝知事の辞職であり、給与等の返上ではない。「辞職勧告決議」はおカネで済まされる問題ではない。
だから、川勝知事の給与等返上に関わる条例案を、自民党県議団がすんなりと受け入れる理由は何ひとつない。もし、受け入れたとしたら、何のための「辞職勧告決議」だったのか県民から疑われてしまうだろう。しかし、だからどうすべきかの妙手はないのだ。
県民は大喜びする妙案
中山県議が残っていれば、水面下で中山県議を懐柔した上で、もう一度、不信任決議案に持ち込めたかもしれないが、いまや遅きに失している。
筆者は、おカネのことならば、おカネで解決すべきと何度も言ってきた。給料、ボーナスだけでなく、4期目の退職金も一緒に辞退させろ、と提案した。
2009年初当選した川勝知事は、選挙公約で退職金4090万円を全額返上すると表明、そのための条例案が2012年9月県議会で可決され、1期目の退職金を辞退した。
2期目、3期目は退職金辞退の公約をしなかったとして、川勝知事は退職金4060万円を受け取った。合計約8120万円である。
一方、2016年、2019年、2020年に退職した3人の副知事は、退職金約2000万円を辞退した。この辞退の裏には、川勝知事が退職金を辞退させる、あるいは辞退せざるを得ないよう忖度を誘導した疑いが強い。
県特別職報酬審議会の答申通り、知事だけでなく、副知事は法律、条例に厳格に従って退職金を受け取るべきなのに、3人の副知事は個人の意思で退職金を辞退するという異例の事態となった。
全国的に見ても、知事が退職金を受け取っているのに、副知事が自主的に退職金を辞退している事例はない。
こんな異常事態の中で、川勝知事が不祥事の責任を取って給料、ボーナスだけを返上する条例案を提出しても、県民は誰も納得できない。
自民党県議団は、給料、ボーナスの約440万円に上乗せして、退職手当約4060万円の返上も求めればいい。そうすれば、合計約4500万円で切りもいい。給料、ボーナスをさらに加算して、合計約5000万円にでもすれば、県民は大喜びだろう。おカネの額をどうするかで自民党県議団は知恵を絞るべきだ。
県議会の「辞職勧告決議」は中山県議には重い刑罰のような結果となったが、川勝知事には何らの痛痒も与えなかった。
今回の問題は、おカネの額を大幅に引き上げることで決着させたほうがいい。それで川勝知事に少しくらいの痛みを与えることができるかもしれない。