「貯水」を「処理水」と混同させるミスリード
アナウンサー:福島第一原発では、原子炉建屋に地下水が流れ込むなどし、今も汚染水が1日に90トン出ています。この汚染水はALPSによって浄化され、処理水として既に134万トンがタンクに貯められています。
しかしその134万トンのうち、実はおよそ7割はトリチウム以外の放射性物質を取り切れておらず、規制基準を満たしていません。再びALPSなどで処理する必要があるのです。すべての放出作業が完了するには最短でも30年はかかる見通しです。
長崎大学の鈴木達治郎教授は、放出される処理水は通常の原発から排出されているものとは異なる。信頼できる第三者機関を設置して放出プロセスを監視すべきだとしています。
タンクの貯水のうち7割が規制基準を満たしていないことを問題視する番組ですが、これらの貯水は再度ALPSで処理して環境基準を満たしたことを確認した上で放出することになっています。
番組は、これらの「貯水」を「処理水」と混同させるミスリードを行っています。
放出に30年かかるというのは、可能な限り海洋へ負担をかけないためです。国が定めた通常の安全基準で放出すれば、理論的に1年で放出は完了します。番組がミスリードするような「余儀なく放出に30年もかかってしまう」のではなく「意図的に30年かけて放出する」のです。
また、処理水の放出にあたっては、世界で最も信頼できるIAEAが、第三者機関として、最後の一滴まで処理水の放出に関わることを宣言しています。IAEAの立ち合いでは不十分と考えるなど、常軌を逸した要求です。
公共の電波を使ってこんな突拍子もない要求や確信的なデマを流しているテレビ番組にこそ、社会にとっての大きな不利益であり、信頼できる第三者機関の監視が必要です。
関口宏氏:廃炉ができない限りは出続けるわけだから、30年という目途はあるけど、本当にそれで終わるか疑問だ。
廃炉作業を進めるための処理水問題の解決を番組が妨害していることを関口氏は認識していないようです。