【リニア】川勝知事がやるべき、たった一つのこと|小林一哉

【リニア】川勝知事がやるべき、たった一つのこと|小林一哉

6月30日、静岡新聞に、「知事 JR社長に会談要望 リニア解決へ『2人だけで』 県議会答弁」という見出しの大きな記事が掲載された。 しかし、当日の議会を傍聴していた筆者には、そんな内容の発言はなかった。 静岡新聞は、なぜこのような記事を出したのか――。


静岡新聞の事実誤認

静岡県議会で答弁する川勝知事(静岡県議会本会議場、筆者撮影)

静岡新聞2023年6月30日付に、「知事 JR社長に会談要望 リニア解決へ『2人だけで』 県議会答弁」という見出しの大きな記事が掲載された。記事は、静岡県議会6月定例会の論戦を伝えたものである。

その前文は〈川勝平太知事はリニア中央新幹線トンネル工事を巡る問題の解決に向け、JR東海の丹羽俊介社長とのトップ会談が「難局打開、信頼醸成のために重要」との認識を示し、「2人だけでぜひ会いたい」と社長に“ラブコール”を送った〉など見出し通りの記事となっていた。

本文は〈川勝知事は4月1日付で就任した丹羽社長と同12日に県庁で面会したが、「前社長(金子慎現会長)が同席していた。2人だけであったことがない」と述べ、丹羽社長と1対1での会談にこだわる姿勢を見せた。

社長の印象について「われわれの考えをきちんと伝えることが重要。丹羽社長とはそれができる感触を得ている」と評した〉とどうでもいい川勝知事の感想を書いていた。
筆者は、当日の県議会を傍聴していた。

だから、静岡新聞が伝えた〈リニア解決へ向けて川勝知事が「2人だけでぜひ会いたい」と社長に“ラブコール”を送った〉とする事実はなかったことを断言する。
なぜ、静岡新聞はそのような事実誤認の印象操作を行ったのか?

“ラブコール”などなかった

当時の状況から振り返る。

29日の県議会代表質問で、公明党の蓮池昇平議員が「川勝知事からJR東海の丹羽社長に対して、定期的なトップ会談を申し入れてはいかがか。

マスコミやネットには、静岡の水、山梨の水に関する山梨県知事の発言や川勝知事の会見で切り取られる発言など、本質的な議論からほど遠いものばかりが伝えられている。

知事と社長の会談で話し合われるテーマは事前にリニア中央新幹線建設促進期成同盟会の皆様に知らせることで、本県の懸念や課題を共有することにつながる。

また、オブザーバーとして大井川流域の利水関係者にも参加してもらうことがよいのでは」などとトップ会談とともに2つの提案をした。特に、大井川利水関係者をオブザーバー参加させるという提案は注目に値した。

これに対して、川勝知事は「本県の課題を早期に解決するためには、まず、県専門部会等での対話で論点を明確にし、科学的工学的な議論を進めてもらうのが重要だ」などと述べた。

蓮池県議は、5年間も県専門部会で議論してきたのに何らの進展がないから、トップ会談を知事に提案したのだろう。科学的でも工学的でもない議論はそろそろ打ち切るべきだと言いたかったのかもしれない。

川勝知事は「トップ会談は、難局を打開するためにも、信頼を醸成するためにも重要。大変有意義だ。同じように丹羽新社長も考えていただければという気持ちだ」など回答した。トップ会談が「大変有意義」だとは言っているが、その会談開催を自らが要望しているわけではないようだ。

知事の回答がわかりにくかったため、蓮池議員は「トップ会談を知事から申し入れる考えがあるのか」と再質問した。
川勝知事は「ぜひ、会いたいという気持ちは間接的に伝えてある。いつでも会いたいという気持ちを持っている。これがわたしの意向であることは、多分、伝わっていると思う。明快な回答ではないが」などと逃げてしまった。
 

川勝知事のほうから是が非でも会いたいという気持ちがないことを明らかにしたことがわかる。つまり、“ラブコール”などなかったのだ。


関連する投稿


【川勝劇場終幕】川勝平太とは何者だったのか|小林一哉

【川勝劇場終幕】川勝平太とは何者だったのか|小林一哉

川勝知事が辞任し、突如、終幕を迎えた川勝劇場。 知事の功績ゼロの川勝氏が、静岡に残した「負の遺産」――。


川勝知事の辞意表明…リニアの命運を決める戦いが始まる|小林一哉

川勝知事の辞意表明…リニアの命運を決める戦いが始まる|小林一哉

急転直下、辞意を表明した川勝知事。しかし、本当の戦いはここからだ――。


マスコミが報じない川勝知事が暴言失言を恐れない理由|小林一哉

マスコミが報じない川勝知事が暴言失言を恐れない理由|小林一哉

「磐田は浜松より文化が高かった」 また暴言をした川勝知事。しかし、撤回もせず、悪びれる様子もない。なぜ、川勝知事は強気でいられるのか――。


川勝知事の「真っ赤な嘘」ゴールポストを動かした決定的証拠|小林一哉

川勝知事の「真っ赤な嘘」ゴールポストを動かした決定的証拠|小林一哉

山梨県選出の中谷真一議員が静岡県がゴールポストを動かしていると批判すると、川勝知事はすぐにさま「ゴールポストを動かしたことは一度もない」と反論。 しかし、静岡県の資料を見てみると……。


川勝知事、リニア妨害シナリオ|小林一哉

川勝知事、リニア妨害シナリオ|小林一哉

静岡県のリニア問題責任者を務める副知事による記者会見は、デタラメだらけだった。この記者会見の本当の目的とは――。


最新の投稿


【今週のサンモニ】反原発メディアが権力の暴走を後押しする|藤原かずえ

【今週のサンモニ】反原発メディアが権力の暴走を後押しする|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


【読書亡羊】「時代の割を食った世代」の実像とは  近藤絢子『就職氷河期世代』(中公新書)

【読書亡羊】「時代の割を食った世代」の実像とは  近藤絢子『就職氷河期世代』(中公新書)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【今週のサンモニ】臆面もなく反トランプ報道を展開|藤原かずえ

【今週のサンモニ】臆面もなく反トランプ報道を展開|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

米国大統領選はトランプ氏が圧勝した。米国民は実行力があるのはトランプ氏だと軍配を上げたのである。では、トランプ氏の当選で、我が国はどのような影響を受け、どのような対応を取るべきなのか。


【今週のサンモニ】『サンモニ』は最も化石賞に相応しい|藤原かずえ

【今週のサンモニ】『サンモニ』は最も化石賞に相応しい|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。