世界はかけがえのない人を失った|花田紀凱

世界はかけがえのない人を失った|花田紀凱

安倍総理が兇弾に斃れたあの日から、安倍総理について思わない日はない。 同時に、いわれなき批判を浴びせ続けた朝日新聞をはじめとする無責任なメディアに腹が立つ。花田編集長、怒りと悲しみの安倍総理追悼文。


こんな形でお別れなんて

こんな形で安倍元総理とお別れするとは夢にも思わなかった。
 
最後にお会いしたのは5月13日。憲法改正の話をしていただいた。その後、2度ほど電話でお話した。
 
昭恵さんとは1週間ほど前、産経の沢辺隆雄論説副委員長、元社会部記者の将口泰浩さんたちと、昭恵さんの店「渦」で会食した。
 
いつも通り、明るく、楽しいはじけるような笑顔の昭恵さんだった。
 
奈良県立医大に駆けつけた昭恵さんは、心肺停止状態の安倍さんに「晋ちゃん! 晋ちゃん!」と必死に呼びかけていたという。
 
そのシーンを思い浮かべる度に涙が出てくる。
 
なぜ、こんなことに。
 
あれから、安倍さんのことを思わない日はない。哀しい。そして悔しい。
 
日本は、いや世界はかけがえのない人を失った。
 
それにしても……。
 
朝日新聞をはじめとする無責任なメディアには本当に腹立たしい思いが湧いてくる。第1次政権の時から、どれだけ安倍総理にいわれなき批難を浴びせ、貶め続けてきたことか。
 
そして亡くなった7月9日の6時、朝日新聞デジタルはこんな記事を掲載した。
 
タイトルは、
「森友・加計、桜…「負の遺産」真相不明のまま 安倍元首相が死亡」
 
そこには銃撃されて亡くなった一国の宰相に対する一片の哀悼の気持ちも、敬意もない。
 
こんな時に、平気で、こんな記事を書く記者、それを何の注意もせず、そのまま掲載するデスク、編集長。これが朝日新聞なのだ。
 
翌朝刊、1面に社説を持って、来て、「民主主義の破壊許さぬ」と題して、凶行を批難し、テロを批判。
〈私たちはそのつど、卑劣な行為への憤りを分かち合い、屈することなく、ひるむことなく、ともかくも自由な社会を守ってきた。〉
 
政治家としての評価は一切触れていない。触れたくなかったのであろう。
 
ちなみに産経は「卑劣なテロを糾弾する 計り知れぬ大きな損失だ」と、きちんと安倍総理の評価に触れている。
 

マスコミの批判に、安倍元総理はよく耐えた

Getty logo

それにしても、二度の在任中、朝日をはじめとするメディアのいわれなき、執拗な批難の洪水。
 
安全保障関連法、特定秘密保護法の時には、「戦争に巻き込まれる」と大合唱。そして、森友・加計・桜を見る会……。安倍元総理はよくも耐えてきたものだ。
 
たとえば2017年都議選の時、秋葉原で安倍元総理が「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と発言した問題。
「自由な言論を封ずるのか」と批難されたが、あれは、事前に場所取りをして、大声を出して総理の発言を妨害していた連中を指していたことは明らかだった。
 
なのに、メディアは、総理があたかも、一般聴衆に対して、そう言ったかのように批難し続けた。
 
こんなことを書き連ねても詮ない。
 
最後に。安倍総理の死を悼んで各国首脳がコメントを出した。
 
インドのモディ首相は「安倍氏に深い敬意を表し、9日は全国的に喪に服す」と発表。ブラジルのボルソナロ大統領は即座に3日間の服喪を宣言。ブータンは9日を追悼の日とし、国内各地や大使館などで半旗が掲げられた。
 
ところが肝心の日本では「前例にない」云々で、やっと11日になって半旗が掲げられることになった。
 
日本はどんな国になってしまうのか。

関連する投稿


「103万円の壁」、自民党は国民民主党を上回る内容を提示すべき|和田政宗

「103万円の壁」、自民党は国民民主党を上回る内容を提示すべき|和田政宗

衆院選で与党が過半数を割り込んだことによって、常任委員長ポストは、衆院選前の「与党15、野党2」から「与党10、野党7」と大きく変化した――。このような厳しい状況のなか、自民党はいま何をすべきなのか。(写真提供/産経新聞社)


トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

トランプ再登板、政府与党がやるべきこと|和田政宗

米国大統領選はトランプ氏が圧勝した。米国民は実行力があるのはトランプ氏だと軍配を上げたのである。では、トランプ氏の当選で、我が国はどのような影響を受け、どのような対応を取るべきなのか。


たちまち5刷!『マンガ安倍晋三物語』制作秘話|TEAM ABE(チーム安倍)

たちまち5刷!『マンガ安倍晋三物語』制作秘話|TEAM ABE(チーム安倍)

昭恵夫人が「号泣しました。生涯最高の一冊です」と大絶賛。全国から感動、感涙の声が続々。安倍晋三総理の67年の生涯を描いた『マンガ安倍晋三物語』の制作秘話を未公開イラストと共に初公開!


トランプ前大統領暗殺未遂と政治家の命を軽視する日本のマスメディア|和田政宗

トランプ前大統領暗殺未遂と政治家の命を軽視する日本のマスメディア|和田政宗

7月13日、トランプ前大統領の暗殺未遂事件が起きた。一昨年の安倍晋三元総理暗殺事件のときもそうだったが、政治家の命を軽視するような発言が日本社会において相次いでいる――。


安倍元総理の命日にあたり、その功績を改めて記す|和田政宗

安倍元総理の命日にあたり、その功績を改めて記す|和田政宗

本日は安倍晋三元総理の命日。安倍元総理が凶弾に倒れてから2年を迎えた。改めてご冥福をお祈りするとともに、非道な暗殺を満身の怒りをもって非難する。


最新の投稿


【シリーズ国民健康保険料①】とにかく誰もが困っている「国民健康保険料」|笹井恵里子

【シリーズ国民健康保険料①】とにかく誰もが困っている「国民健康保険料」|笹井恵里子

突然、月8万円に……払いたくても払えない健康保険料の実態の一部を、ジャーナリスト・笹井恵里子さんの新著『国民健康保険料が高すぎる!』(中公新書ラクレ)より、三回に分けて紹介。


【シリーズ国民健康保険料②】あまりに重すぎる負担…容赦のない差し押さえも|笹井恵里子

【シリーズ国民健康保険料②】あまりに重すぎる負担…容赦のない差し押さえも|笹井恵里子

税金の滞納が続いた場合、役所が徴収のために財産を差し押さえる場合がある。だが近年、悪質な差し押さえ行為が相次いでいるという(笹井恵里子『国民健康保険料が高すぎる!』(中公新書ラクレ)より)。


【シリーズ国民健康保険料③】“年収の壁”を見直すと国民保険料はどうなるの…?|笹井恵里子

【シリーズ国民健康保険料③】“年収の壁”を見直すと国民保険料はどうなるの…?|笹井恵里子

いまもっぱら話題の「103万円、106万円、130万円の壁」とは何か。そしてそれは国民健康保険料にどう影響するのか(笹井恵里子『国民健康保険料が高すぎる!』(中公新書ラクレ)より)。


【今週のサンモニ】重篤な原子力アレルギー|藤原かずえ

【今週のサンモニ】重篤な原子力アレルギー|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


【読書亡羊】激震の朝鮮半島に学ぶ食と愛国心  キム・ミンジュ『北朝鮮に出勤します』(新泉者)、キム・ヤンヒ『北朝鮮の食卓』(原書房)

【読書亡羊】激震の朝鮮半島に学ぶ食と愛国心 キム・ミンジュ『北朝鮮に出勤します』(新泉者)、キム・ヤンヒ『北朝鮮の食卓』(原書房)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!