日本では、以上の全く異なる思想に基づく2つの考えを足して2で割るような政策が目立った。極めて残念でならない。
分科会に代表されるゼロコロナポリシーは、強い私権制限を行使している台湾、ニュージーランド、ベトナムですら成功しておらず、ワクチン接種率も感染率も低いこれら国は新型コロナ感染拡大から1.5年たった今でもまったく出口が見えていない。集団免疫獲得においては最も立ち遅れており、優等生どころか周回遅れである。感染力が強く、既に世界で2億人もの患者が出ている新型コロナウイルス感染症において、ゼロコロナポリシーは絵に描いた餅にすぎない。これらの国はずっと鎖国を続けざるを得ない上に度々クラスターに悩まされている。
現実的かつ唯一の活路「ウィズコロナ路線」
今こそ、現実的かつ唯一の活路であるウィズコロナ路線を明確にすべきである。その際は、医療体制を強化し、医療オールジャパン体制をとる必要がある。そのための財政支援は実はこの1.5年でかなり成されている。
もう一つは、感染症法の1類ないし2類相当という医療の足かせを撤廃する事である。この足かせのために、例えば東京都にある10万床の内、6000(6%)床しかコロナ用に確保できないし、都内にある病院650の内75病院(11%)しかコロナを受け入れていないし、都内にある2500のICU・準ICUのうち、390(うち251床を使用)しかコロナ用に確保できていない。
このように医療オールジャパン体制からほど遠い状態にあるのは1)感染症法の1類ないし2類相当という足かせ、2)日本医師会・開業医がコロナに関わりたくないと逃げ回っている、3)現場をわかっていない分科会が学者目線で視野狭窄的にゼロリスク・ゼロコロナを追及している、からである。
第二の分科会と5類指定変更へ
今、政府がすべきはウィズコロナポリシーのチームを作る事である。このチームのメンバーには感染症専門医は必要ない。救急医療、災害医療の専門である医師らが中心となる、第二の分科会と呼べるものだ。
感染症法の5類指定にして、どこでも誰でも扱える病気にすることで、患者はインフルエンザ、高血圧、糖尿病の治療の時と同様に、調子が悪かったら都内にある12700の開業医・かかりつけ医に診てもらう。彼らは今までほとんど新型コロナウイルス診療に当たっていない。対応といっても専らPCR検査対応をしている例が多い。通院でもデキサメタゾン、消炎鎮痛剤、必要であれば有効性の示された治療薬を使い、早期に対応することによって重症化をできる限り予防する。
もし、重症化の兆候があったら、保健所経由ではなく、開業医が長年構築してきた病診ネットワークを駆使して、病院に患者を入院させる。病院は現在都内で71/650病院しか新型コロナ対応に参画していないが、5類なら650の大多数の病院が貢献できる。そして、重症化したら、ICU(集中治療室)のある病院に紹介してもらう。
なお、都内にあるICUを備えた病院でコロナ重症化患者を引き受けているのは現在3割程度だが、こうした体制がとれれば都内にある2500のICUの仮に半分として1250のICUが有効活用できる。ちなみにロンドンで感染爆発した際はロンドン市内のICUの98%にあたる810のICUベッドをコロナ用にすることで医療崩壊を回避した。