「公私混同大国」日本は ゴーンを責められるか|デービッド・アトキンソン

「公私混同大国」日本は ゴーンを責められるか|デービッド・アトキンソン

ゴーン氏の逮捕にはいくつかの違和感を覚えます。まず、私が非常に違和感を覚えるのは、ゴーン氏が経費を「私的に使ったこと」が逮捕の理由の1つとされていることです。


テロリスト以下の扱い

もう1つ違和感を覚えるのが、日本の刑事手続きです。日本の取り調べでは、弁護士の立ち会いは禁止されています。取り調べに弁護士が立ち会えないというのは主要7カ国(日米英仏独伊韓)で日本だけです。家族、友人との面会も禁止。簡単に別件逮捕で勾留期間を40日延長して、身柄拘束ができてしまうのも、異常です。海外ではテロリストでも、これほどの扱いは受けません。


「日本には日本のルールがあるのだから、それに則ってやるのが当然だ。海外から批判されるいわれはない」


もちろん、その言い分もわかります。しかし先般、韓国で徴用工判決が出た時、安倍総理はじめ日本国民は「国際社会の常識では考えられない」と批判していました。徴用工判決について批判するならば、日本の刑事手続きについても“国際社会の常識では考えられない”わけですが、前者は批判して、後者は容認するというのは、ダブルスタンダードではないでしょうか。


私も一度だけ、警察の取り調べを受けたことがあります。近所の起きた些細なトラブルで、警察が絡むことになりました。最終的には何も問題なく終わりましたが、その時の恐怖は忘れられません。


取り調べをしたのは組織犯罪対策課の警察官です。


「組織犯罪というと暴力団の取り締まりでしょう。なぜ私があなた方が取り調べるんですか」


「外国人が絡む犯罪は、組織犯罪対策課がやることになっている」


さすがに“その筋”の人を取り締まる警察官だけあって、目付きからして普通の警察官と違います。友人の体験や噂、マスコミの記事で聞いていた以上の恐怖でした。特に、起訴されると、ほぼ100%有罪になる日本ですからなお怖いのです。


話を戻しましょう。違和感を覚えるのは日産がゴーン氏を解雇したことです。


ゴーン氏が逮捕されて、有罪、無罪が決まる前に、日産がすぐに解雇したのも異常です。普通のグローバル企業のガバナンス制度でいけば、もし、上層部の誰かが逮捕されたら、役職を停止させて裁判の結果を待つことが常識でしょう。もし解雇してしまって、あとで無罪が確定したら、不当解雇でとんでもない額の賠償金を取られます。ために、ルノーはゴーン氏を解雇していません。


なぜ、ここまで強引に、しかも日本的とは言えないやり方で、日産はゴーン氏を追放しようとしているのか、不思議でならないのです。

日本の「生産性革命」はここから始まる!

著者略歴

関連する投稿


【激突大闘論シリーズ③】消費税減税で経済は変わるのか|玉木雄一郎×デービッド・アトキンソン【2025年9月号】

【激突大闘論シリーズ③】消費税減税で経済は変わるのか|玉木雄一郎×デービッド・アトキンソン【2025年9月号】

月刊Hanada2025年9月号に掲載の『【激突大闘論シリーズ③】消費税減税で経済は変わるのか|玉木雄一郎×デービッド・アトキンソン【2025年9月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


【激突大闘論シリーズ②】103万円の壁|玉木雄一郎×デービッド・アトキンソン【2025年4月号】

【激突大闘論シリーズ②】103万円の壁|玉木雄一郎×デービッド・アトキンソン【2025年4月号】

月刊Hanada2025年4月号に掲載の『【激突大闘論シリーズ②】103万円の壁|玉木雄一郎×デービッド・アトキンソン【2025年4月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


インボイス反対派を完全論破!|デービッド・アトキンソン

インボイス反対派を完全論破!|デービッド・アトキンソン

10月から開始されるインボイス制度。反対論が喧しいが、なぜ、子供からお年寄りまで払っている消費税を、売上1000万円以下の事業者というだけで、免除されるのか。 まったく道理が通らない!


中国の金融危機でリーマン級災厄の恐れ|田村秀男

中国の金融危機でリーマン級災厄の恐れ|田村秀男

国内金融規模をドル換算すると、2022年に38兆ドルの中国は米国の21兆ドルを圧倒する。そんな「金融超大国」の波乱は米国をはじめ世界に及ぶ。


親権制度はイギリスを見習え!|デービッド・アトキンソン

親権制度はイギリスを見習え!|デービッド・アトキンソン

後を絶たない実子誘拐の被害。どうすれば、止められるのか。 そのヒントは、イギリスの親権制度にあった!


最新の投稿


【独占手記】我、かく戦えり|杉田水脈【2025年10月号】

【独占手記】我、かく戦えり|杉田水脈【2025年10月号】

月刊Hanada2025年10月号に掲載の『【独占手記】我、かく戦えり|杉田水脈【2025年10月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


【読書亡羊】ウクライナの奮闘が台湾を救う理由とは  謝長廷『台湾「駐日大使」秘話』(産経新聞出版)|梶原麻衣子

【読書亡羊】ウクライナの奮闘が台湾を救う理由とは 謝長廷『台湾「駐日大使」秘話』(産経新聞出版)|梶原麻衣子

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


TBS報道特集の「差別報道」|藤原かずえ【2025年10月号】

TBS報道特集の「差別報道」|藤原かずえ【2025年10月号】

月刊Hanada2025年10月号に掲載の『TBS報道特集の「差別報道」|藤原かずえ【2025年10月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


悲劇の空母「飛龍」の無念|上垣外憲一【2025年10月号】

悲劇の空母「飛龍」の無念|上垣外憲一【2025年10月号】

月刊Hanada2025年10月号に掲載の『悲劇の空母「飛龍」の無念|上垣外憲一【2025年10月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


【今週のサンモニ】「再エネ教」の信者の集会|藤原かずえ

【今週のサンモニ】「再エネ教」の信者の集会|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。